「今宵こよいのサーカス、
心ゆくまでお楽しみを……なーんてね!
真面目な雰囲気なんてあたいには似合わない!
イッツショータァーイム!」
そうしてついに、クラウンピースによるパフォーマンスが始まった。
「愉快かい、爽快かい。この日のために
準備してきたあたいの芸は楽しいかい!?
さあさ、目を離さないで。
あたいの芸に同じものは存在しない。
見逃したが最期、一生見ることは叶かなわない。
瞬まばたきをやめて、ただ真っすぐとあたいを見て。
今だけは、あたいが主役なんだから!」
彼女の美しい芸は見る者すべてを魅了し、
そこから生みだされる幻想的な空間は観客席にいるすべての生き物を取り込み、
呼吸する一瞬すら惜しいと思えるほどに虜とりこにした。
「くくく。みんなアホみたいに口を開けてる。
いいね、最高だ。
あたいのサーカスを見にきてくれたことを
後悔させないよう、もっとがんばらないとね!
それじゃあみんないくよっ
――イッツ、ルナティックタァーイム!」
『人を狂わす程度の能力』を持つクラウンピース。
その能力とは関係なく、ただただ純粋に、彼女のパフォーマンスは人々の視線を釘付けにした。
誰も彼もが彼女の姿から目を逸そらすことすらできず、
自分がゆっくりと静かに狂気に染まりつつあることに気づくことができずにいた――。