ある日の夜、守矢神社で宴会が開かれた。 ライバルである博麗神社に対抗して開かれたそれは、特筆すべき点のないごく普通のものだった。 ただ飯を食らい、ただ酒を飲むだけの、どこにでもある普通の宴会。 開かれる場所が違うだけであり、その本質は何も変わらない。 ――それが、守矢神社の祭神である八坂神奈子やさかかなこには我慢ならなかった。   「地味だ地味だ地味すぎる!
型にはまった宴会の何が楽しいというのか!
常識に縛られた何の変哲もない普通の集まりなど、
守矢の宴会と呼べようものか!」
そう叫ぶと、神奈子は巨大な御柱おんばしらを呼び出し、その頂点に座した。 突然のことに、祭神を下から見上げる参加者たち。 そんな彼らに向かって、神奈子は高らかに宣言する。   「今から諸君らに、夏の風物詩をお見せしよう。 ――それも、ここでしか味わえぬであろう、
最高の景色を!」
神奈子が手をかざすと、数多あまたの御柱おんばしらが出現し、次々に空へと打ち上げられる。 御柱おんばしらは夜空を真っ直ぐ突き進み――そして、爆散。 幻想郷中に響かんばかりの轟音ごうおんとともに、大輪の花が咲いた。   「さあ、まだまだ終わらぬぞ。
守矢の宴会はこれからだ――!」  
妖怪の山の上空は、その花火のごとき美しい弾幕で埋め尽くされた。