それははたして薬なのか、劇薬なのか。 それは天使からの救いなのか、はたまた悪魔からの宣告なのか。 訪れる未来は輝かしい栄光なのか、それとも一寸先には闇しかない絶望なのか。   「私に聞かれたって困りますよ。
私はただ、求める者に助言をするだけ。
それをどう生かすかは、
助言を授かった者次第でございます」
菅牧典くだまきつかさは、管狐くだぎつねだ。 人を惑わす彼女のささやきは、その者に間違いなく富と繁栄を授けることだろう。 だが、あくまでもそれは刹那的なものにしか過ぎない。 盛者必衰じょうしゃひっすい、彼女の言葉に従う者は、最後には必ず破滅の未来へたどり着く。
「ああ、運がなかったようですね。
でも大丈夫。きっとやり直せますよ。
私は手助けできませんが、どうかがんばって。
……え? いやいや、ご冗談を。
あなたがそうなってしまったのは、
ほかの誰でもないあなたのせいです。
私に責任を転嫁するなんて、
恥ずかしくないんですか?」
彼女はあくまでも助言するだけ。それをどう使うかは、人間のさじ加減。   「……まあ、このままだとかわいそうですし?
助言ぐらいはしてあげましょうか。
その先であなたがどうなるのかは、
私にも分かりませんけどね。くくくっ」  
それでも、その妖艶で蠱惑的こわくてきな甘い言葉には、 人間には抗あらがうことのできない、魅了される不思議な力が存在した。