ある事件で関わり、友人となった女苑じょおんに誘われ、花火大会を訪れていた水橋みずはしパルスィ。
そんな彼女はなぜか、警備中に怪我けがをしたという
白狼天狗はくろうてんぐの代わりを少しのあいだ務めてほしいと、
天狗てんぐたちから頼まれることになってしまった。
「どうして私がこんなことを……白狼天狗はくろうてんぐの
代わりなんて、私に務まるはずがないのに……」
渋々ながら警備を引き受けた彼女は、警備用にと渡された長刀を恨めしそうににらみつける。
しかし、文句を言っていても仕方がない。
任された以上、仕事はきっちりこなすのが礼儀というもの。
「警備なんてやったことないけど、
橋姫はしひめとやることはそんなに変わらないでしょ」
だが、彼女の警備員としての腕前は、白狼天狗はくろうてんぐたちの度肝を抜くこととなる。
来場者のひとりひとりに嫉妬し、その特徴を瞬く間に把握する観察眼。
不審者を見かければ容赦なく詰問し、不届き者に嫉妬をぶつけて撃退する決断の速さ。
その優秀な見張りとしての活躍は、橋姫はしひめの名に恥じぬものだった。
「えぇ……私、いつもやっていることを
そのままやっただけなんだけど……」
その後、一部の白狼天狗はくろうてんぐたちのあいだで、
地底の橋を長いあいだ見張っていた、優れた警備能力を持つ妖怪としてパルスィが噂うわさされること、
活躍してしまった結果、欠員が出たときに警備を頼まれるようになることなど、
このときのパルスィは知る由もなかったのである。