幻想郷に存在する数多あまたの妖怪。 その中でも、独自の社会性を持ち、大きな組織を作り上げている天狗てんぐと呼ばれる者たちがいる。 強き者には下手に出て、弱き者には強く出る。 実力を持ちながらもそのすべてをさらけ出すことは一切なく、 頭脳を用いて狡猾こうかつに自らの理想や野望を叶えんとする。 これだけ聞けば、かなり始末が悪い妖怪と思えてしまうだろう。 しかし、その狡猾こうかつさがあるからこそ、 彼女たち天狗てんぐは古から現代までの長い歴史を紡ぐことができたのだ。
「まあ、勘違いされるのも当然ではありますね。 我々天狗てんぐは常に仮面を被かぶっていますから。
素顔をさらすことは、ほとんどありません」  
そんな天狗てんぐのうちのひとり、射命丸文しゃめいまるあや。 普段はお気楽なジャーナリストとして振る舞っている彼女も、その本質は天狗てんぐそのもの。 おちゃらけた笑顔に気を許し、無礼な態度をとりすぎると、嵐が吹きすさぶこととなる。
「踏み込んでいい領域を判断できないとは
……これは、お仕置きが必要みたいね」  
どれだけ友好的であろうとも、彼女は妖怪。 人間なんかよりも遥はるかに強く――そして、強大な存在であるのだから。