人間の里に、珍しい飲み物を提供しているお店がある。
そんな噂うわさを耳にした姫海棠ひめかいどうはたては、
目一杯のおしゃれをし、家を飛びだした。
いつもは念写で済ませてしまう、自分の新聞に載せるための写真。
しかし、今回ばかりはそうはいかなかった。
飲み物の記事を書くなら、味についての感想が必須。
さらに、それを実際に味わっている自分の写真があったほうが記事の説得力が増す。
「外には出たくないけど……こればっかりは
しょうがないわ。これも文に新聞で勝つため。
がんばれ私、今回の記事で、幻想郷のみんなを
あっと驚かせてやるって決めたでしょう！？」
だが、いつもと違い、今日の被写体は他人ではなく、自分自身。
自分で自分をカメラで撮るというのは、はたてとしては初めての経験。
緊張せずに撮れるだろうか、引きつった笑みを浮かべずに済むだろうか……。
はたては未知の世界に恐怖と緊張を抱き、滝のような冷や汗を流す。
「じ、自撮りぐらい朝飯前よ。私の映え映えな
自撮り写真を、見せてあげるんだから……！」
幻想郷に新たなブームを巻き起こすであろう飲み物の名は、タピオカミルクティー。
その記事を書くために、鴉天狗からすてんぐの少女は一世一代の自撮りに挑む！