「ほらー、お空ー。もう朝だよ~。
早く支度しないと、仕事に遅れちゃうよ~?」  
朝でも太陽が差しこむことのない旧地獄の地霊殿ちれいでんにて。 元気な声を響かせるのは、古明地こめいじさとりのペットである火焔猫燐かえんびょうりんだ。 彼女が起こそうとしているのは、同じペットの立場にあり、 かつて幻想郷にて大きな異変を起こした地獄鴉じごくがらすの友人だ。  
「んにゃんにゃ……まだ燃やし足りないよぉ……」
「なんか物騒な夢見てる……
おーい、お空! いつまで寝てるのよー!
ったく……朝に弱いのは昔っから変わらないなあ」   異変を起こしたときも、それ以前も……そして今だってそうだ。 長い付き合いの親友、自分と真逆でどこか抜けていたりおバカだったりする……けれど。 いつも笑顔で明るいこの友達のことが、なんだか放っておけないのだ。  
「ふわわぁ……おあよぉ、おりん……すぴすぴ」
「おはよう、お空。寝癖すごいよ。そんな姿、
さとり様に見られたら笑われちゃうよ?」   「それは嫌だぁ……おりん、なんとかしてぇ……」  
「しょうがないなぁ。
ほら、髪の毛整えてあげるから、じっとしてて」  
姿かたちが変わっても、時や環境が変わっても、ふたりが友達であることはきっと変わらない。