ドレミー・スイートは知っている。 ――夢には、さまざまな形があることを。 空に浮かぶ雲をお腹いっぱい食べたい――そんなふわふわとした夢があったり。 鬼すらもなぎ倒す最強の人間になりたい――そんな憧れを描いた夢があったり。 夢の形は人それぞれ。十人十色な夢を、ドレミーは今までいくつも見てきた。 しかし、そんなドレミーですらも、今回の夢への興味を抑えることはできない。 今まさに覚醒しようとしている少女、宇佐見菫子うさみすみれこが見る夢は――。   「これは……ほほう。
こんな建物が、まさかこの世に存在するとは」
幻想郷には存在しない、きらびやかで巨大なお城。 周囲には胡蝶こちょうや不思議な光が飛び交っている、そんな楽しそうな世界。 見ているだけでワクワクしてくる菫子の夢に、ドレミーはすっかり夢中になっていた。   「今までたくさんの夢を見てきましたが、
こんなにも魅力的な夢は初めてです。
それほどまでに、この子の心は
好奇心と想像力に満ちているのでしょうね」  
夢はその人の心象風景を現したもの。 夢の世界でふわふわと浮きながら寝息を立てる菫子に、ドレミーは少しばかりの尊敬を抱くのだった。