穏やかな表情でオープンカフェを楽しむ風見幽香かざみゆうか。 そんな彼女に、一匹の妖精メイドが声をかけてきた。  
「ゆ、幽香さんって、噂うわさに聞いていたのとは、 印象が全然違うんですね」  
「あら? どういう妖怪だと思っていたの?」
「怖い方だって、聞いていたんですけど ……私たちに優しくしてくれるし、 すごく美人で…… 種族は違いますけど、憧れちゃいます」  
緊張しているのか、身体を震わせながら、妖精メイドは褒め言葉を口にする。 それに対し、幽香はヒマワリのような笑みを返す。
「そう、ありがとう。 ……でも、あなたは
ひとつだけ勘違いをしているわ」   「え?」  
「私の趣味は――妖精をかわいがることなのよ?」  
「え」
ビギリ、と石のように固まる妖精メイド。   「あなたもかわいがってあげましょうか?
優しい私と仲良くできるなら、幸せでしょう?」   「あ、その……うう…… え、遠慮しておきますうー!」
からかうような口調で幽香が告げると、妖精メイドはあたふたと立ち去った。   「ふふふ。ごめんなさいね、
優しい妖怪じゃなくって」  
幽香は逃げ去った妖精メイドの後ろ姿を眺め、くすくす笑い、そして再び紅茶を楽しむのであった。