主あるじである寅丸星とらまるしょうが、また宝塔を失くしてしまった。
「そろそろ宝塔とご主人を紐ひもで
括くくりつける必要があるかもしれないな……」
ダウジングロッドを掲げながら、聖輦船せいれいせんの中を歩き回るナズーリン。
宝塔探しを行うのは、もう何度目になるかもわからない。
もはや星がそういう能力を持っているんじゃないかというほどに、宝塔はどこかへ行ってしまう。
少し目を離した隙に、いつの間にか失なくしていることだってあった。
だから、こういうのはもう慣れっこだ。
たとえここがどれだけ入り組んだ場所であろうと、宝塔を見つけるのにそう時間はかからない。
「お、あったあった。まったく……ご主人め、
何が盗まれたかもしれない、だ。
普通に床に転がっているじゃあないか。
いつも通り、うっかり落としているだけだったか」
聖輦船の船首付近で目的の品を見つけたナズーリンは、ため息をこぼす。
ダウジングロッドがあるとはいえ、まさにその捜索は達人技だ。
「さて、と……
ご主人をまたお説教しにいくとするかな」
いまだに宝塔を求めて聖輦船のあちらこちらを駆け回っているであろう星の姿を想像しながら、
ナズーリンは透き通った朝陽あさひの下で、苦笑を浮かべるのであった。