幻想郷の一角、そこには美しい花畑が広がっていた。
さまざまな種類、取り取りの色彩。
美しい数多あまたの命が、そこには元気にたくましく咲き誇っていた。
「すごぉーい!
あっちからこっちまでキラキラしてるーっ!」
そんな場所に、ひとりの妖怪少女が紛れこむ。
興味津々で周囲をきょろきょろと見回す彼女は、漆黒の衣装に身を包んだ、金髪の少女だった。
「幻想郷にこんなところがあったなんて
知らなかったわ。
今度、霊夢たちにも教えてあげようかしら!」
風に揺られる花々を眺める少女。どうやらこの場所が気になるようだ。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり、ひとしきり花畑を堪能たんのうしたところで、
少女は目の前にある一輪の花を、じーっと見つめ始めた。
「甘い匂い~。どんな味がするんだろう。
……美味おいしいのかな?」
口元に指をあて、子供のようによだれを垂らす妖怪少女。
どうやらその花は蜜を運ぶ虫だけでなく、
腹ペコな人食い妖怪まで魅了してしまったようだった。