たくさんの人形を使役する人間がいるらしいと聞いた。
――じつのところ、その魔法使いはもう人間ではないのだが――。
とにかく、そんな人間が、無名の丘へ向かっているらしい。
そんな情報をつかんだメディスン・メランコリーは、
そこで魔法使いが訪れるのを待っていた。
「人形を使役するなんて、絶対に許せない。
人形解放運動を成功させるためにも、
まずは魔法使いの魔の手から
人形たちを救ってあげなくっちゃ!」
かつて人間に捨てられ、鈴蘭すずらんの毒によって妖怪と化したメディスン。
妖怪としては新米だが、彼女の人間に対する憎悪はかなり深く濃厚だ。
操られるがままにされる人形の地位を向上させるためなら、
鈴蘭すずらんの毒をもって人間を苦しめることも選ぶほどに。
「そろそろ来るころかしら……
あっ、あの姿は……ようやくやってきたわね!」
上海人形を引き連れた、金色の髪の魔法使い。
人形作りと人形劇を特技として持つ彼女に、メディスンは力強く言い放つ。
「アリス・マーガトロイド!
人形たちを解放しなさい!」
「あら? これはまた、
ずいぶんとかわいらしいお出迎えね。
もしかして、あなたが
メディスン・メランコリー?」
人形を遣う少女と、棄すてられた人形の少女。
「魔理沙から、人形の妖怪がいると
聞いてきたけど、本当だったみたいね。
……ねえ、メディスン。
突然だけど、私とお友達になりましょう?」
「……はい?」
毒におかされた聖域で、決して相容れないはずのふたりがついに出会ってしまった――。