毘沙門天びしゃもんてんの弟子であり、代理人でもある寅丸星とらまるしょう。
彼女は、人間と妖怪が共存できる世界を願う僧侶、聖白蓮ひじりびゃくれんを心から慕っている。
だがそれと同時に、寅丸星は聖白蓮の信仰対象、毘沙門天の代理でもある。
つまるところ、ふたりは相互に信仰し合っているのだ。
「私は、白蓮の望む世界を見てみたい。
ひとりではなく、彼女と一緒に……。
贅沢ぜいたくな望みに思えるでしょうか?
ですが、これは私の本心です」
相互の信仰は、ふたりの関係において大切な事柄だった。
ゆえに、星は白蓮が二度と悲しまないで済むように、命蓮寺みょうれんじを守り続けている。
「私が優しいとみなさんは言ってくれますが、
私はそこまでできた存在ではありません。
今はこんな姿ですが、
もともとは凶暴な妖怪なのです。
いつあなたに牙を剥むくかもわかりません」
白蓮の存在は、星の中で何よりも優先される。
もし彼女に仇あだなす者が現れれば、星は一切の容赦なく、その者と敵対することだろう。
「我々妖怪のために人生を捧ささげてくれた白蓮は、
誰よりも幸せにならなくてはなりません。
彼女が笑っていられる世界を作るためならば、
私は再び虎に戻ることもいとわない」
普段の穏やかな表情とは打って変わった猛虎もうこの恐ろしい形相、
そしてその片手にて輝く宝塔の光は、邪な存在を刹那のうちにかき消してしまうに違いない。