// BOM card_100_396_00,2,98 START, SET_CARD_BG_IN,100396, SET_BGM,7, MAIN_UI_OFF,1, FADE_IN,500,0, WAIT_SEC,1000, SET_CARD_TEXT,1,1, 「つまるところ、新たな歴史の創造とは card_100_396_00_1 SET_CARD_TEXT,1,1, 未来への歩みだ」 card_100_396_00_2 SET_CARD_TEXT,1,1, 「歴史を創る力は未来を創る。 card_100_396_00_3 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_4 SET_CARD_TEXT,1,1, 未来を見据える人間は、後向きで前に進むのだ」 card_100_396_00_5 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_6 SET_CARD_TEXT,1,1, 「次の歴史を創る若者が過去を学び、 card_100_396_00_7 SET_CARD_TEXT,1,1, 実践を通して未来を創造していくことで……」 card_100_396_00_8 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_9 SET_CARD_TEXT,1,1, くどくどと長ったらしい口上が、寺子屋から聞こえていた。 card_100_396_00_10 SET_CARD_TEXT,1,1, 生徒たちはほとんどの者が話を聞き流し、退屈そうに授業の終わりを待っている。 card_100_396_00_11 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_12 SET_CARD_TEXT,1,1, そんな中、生徒の一人が口を開いた。大工の棟梁の息子で、気の強さを感じる少年だ。 card_100_396_00_13 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_14 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_15 SET_CARD_TEXT,1,1, 「けーねせんせー! card_100_396_00_16 SET_CARD_TEXT,1,1, 授業の時間はとっくに過ぎてるぜよ! card_100_396_00_17 SET_CARD_TEXT,1,1, 時間はちゃんと守れって card_100_396_00_18 SET_CARD_TEXT,1,1, せんせーが言ったことじゃろ!」 card_100_396_00_19 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_20 SET_CARD_TEXT,1,1, 「う、私の言葉を持ち出すか…… card_100_396_00_21 SET_CARD_TEXT,1,1, わかったわかった。 時間を過ぎたのは悪かった」 card_100_396_00_22 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_23 SET_CARD_TEXT,1,1, 生徒の物言いはぞんざいなものだったが、授業の時間を大きく過ぎているのは確かだ。 card_100_396_00_24 SET_CARD_TEXT,1,1, 慧音はしぶしぶといった様子で教科書を閉じると、授業の終わりを宣言する。 card_100_396_00_25 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_26 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_27 SET_CARD_TEXT,1,1, 「今日の授業はここまでだ。 card_100_396_00_28 SET_CARD_TEXT,1,1, みんな、年末と正月を有意義に、 card_100_396_00_29 SET_CARD_TEXT,1,1, 安全に過ごすようにな」 card_100_396_00_30 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_31 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_32 SET_CARD_TEXT,1,1, 子供たちが口々に挨拶を交わし、賑やかに寺子屋を後にする。 card_100_396_00_33 SET_CARD_TEXT,1,1, その姿を見送ってから、慧音は感慨深く呟いた。 card_100_396_00_34 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_35 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_36 SET_CARD_TEXT,1,1, 「やれやれ、なんとも多忙な年だったな」 card_100_396_00_37 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_38 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_39 SET_CARD_TEXT,1,1, 今年は、本当に大変な年だったのだ。 card_100_396_00_40 SET_CARD_TEXT,1,1, ユメミタマのせいで、歴史の編纂作業が増えた。人里の安全確保に奔走することにもなった。 card_100_396_00_41 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_42 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_43 SET_CARD_TEXT,1,1, もっともそれは過ぎたこと。今残るのは、年末に行う歴史の編纂だけだ。 card_100_396_00_44 SET_CARD_TEXT,1,1, 来年にはまた大量の事件が起きるだろうが、それは来年にこなせばいい。 card_100_396_00_45 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_46 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_47 SET_CARD_TEXT,1,1, 「さて、あとひと踏ん張りだ。 card_100_396_00_48 SET_CARD_TEXT,1,1, ユメミタマの騒動も、 card_100_396_00_49 SET_CARD_TEXT,1,1, 来年には終わればいいんだが……」 card_100_396_00_50 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_51 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_52 SET_CARD_TEXT,1,1, ――師走の夜。慧音は人間の里を見下ろせる場所に足を運び、夜空を見上げた。 card_100_396_00_53 SET_CARD_TEXT,1,1, 今年最後の満月を瞳に映すと、妖怪であるハクタクの力が目覚めてくる。 card_100_396_00_54 SET_CARD_TEXT,1,1, 人間から妖怪へと変化していく中で、慧音は厳かに口を開いた。 card_100_396_00_55 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_56 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_57 SET_CARD_TEXT,1,1, 「新幻想史 -ネクストヒストリー-」 card_100_396_00_58 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_59 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_60 SET_CARD_TEXT,1,1, 歴史を創る程度の能力。スペルカードとして応用したものではない本来の使い方。 card_100_396_00_61 SET_CARD_TEXT,1,1, 巻物に綴られた文字が光となり、慧音の周囲で渦巻いていく。 card_100_396_00_62 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_63 SET_CARD_TEXT,1,1, 本来は存在しなかった歴史。事実ではない過去の出来事。訪れていない未来の出来事。 card_100_396_00_64 SET_CARD_TEXT,1,1, それが幻想郷に歴史として刻み込まれていく。 card_100_396_00_65 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_66 SET_CARD_TEXT,1,1, 誤りのないよう丁寧に、時間をかけて歴史を幻想郷に浸透させると、慧音はさらに、 card_100_396_00_67 SET_CARD_TEXT,1,1, 創った歴史や消した歴史との矛盾点を、新たな歴史によって塗りつぶす。 card_100_396_00_68 SET_CARD_TEXT,1,1, そしてようやく慧音が歴史の改変を終えたとき、空は既に白みはじめていた。 card_100_396_00_69 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_70 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_71 SET_CARD_TEXT,1,1, 「ようやく、終わった……」 card_100_396_00_72 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_73 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_74 SET_CARD_TEXT,1,1, ふう、と、疲労した様子で眼を閉じる。 card_100_396_00_75 SET_CARD_TEXT,1,1, 目蓋の裏に浮かぶ子供たちの姿。 card_100_396_00_76 SET_CARD_TEXT,1,1, 彼らは創られた歴史を学び、消された歴史を知らずに育つことだろう。 card_100_396_00_77 SET_CARD_TEXT,1,1, そのことに罪悪感がないといえば嘘になるが……。 card_100_396_00_78 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_79 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_80 SET_CARD_TEXT,1,1, 「……良い年になりますように」 card_100_396_00_81 SET_CARD_TEXT,1,1,   card_100_396_00_82 SET_CARD_TEXT,1,1, card_100_396_00_83 SET_CARD_TEXT,1,1, 昇ってきた陽の光にゆっくりと目蓋を開き、慧音は呟く。 card_100_396_00_84 SET_CARD_TEXT,1,1, 一年、一年、人間にとって貴重な年月が、少しでも良いものになるように。 card_100_396_00_85 SET_CARD_TEXT,1,1, そんな祈りを込めながら、慧音は朝日に照らされた人間の里を眩しそうに眺めた。 card_100_396_00_86 WAIT_TOUCH, SKIP_POS, FADE_OUT,500, STOP_BGM, WAIT_SEC,2000, END,