暗い、暗い、闇の中。 周りには誰もいない。頼れるものも存在しない。 足元すらまともに見えない深淵で、十六夜咲夜いざよいさくやはひとり、深い孤独に沈んでいた。   「……このまま、ずっと、ひとりぼっち」   この先の彼女に光などない。明るい将来なんて考えられるはずもない。 あるのは、満たされない空腹と、誰からも見向きすらされないひとりぼっちという現実だけ。 誰でもいい、助けてほしい。
「ずっと、ひとり、なのかな」   その声が、かき消えるようなつぶやきが、誰かに聞こえることはない。 ここは闇。誰もいないし、誰からも見つけてもらえない暗闇の中。 幼い彼女に手を差し伸べるものなど、いるはずが――  
「まったく。こんなところで何をしているのよ」
――不意に、紅あかい月が彼女を照らした。 聞こえてくるのは、どこか懐かしい少女の声。 闇を退け、咲夜の心を照らす――世界で一番大切な主の言葉だった。  
「さぁ、いくわよ、咲夜。 パーティはまだ終わっていないんだから!」