「――くや。咲夜!」
「っ……あ、あれ? 私は、いったい……」
「何をぼうっとしているのよ。パーティの途中で
居眠りするなんて、あなたらしくもない」
「お嬢様……? さっきまで、私は……」
「白昼夢でも見ていたの?
立ったまま寝るだなんて疲れている証拠よ。
無理をするなと言ったでしょう? 私の横に
立つときは常に優雅に、シャキっとなさい」
さっきまでの闇はどこにもなく。
咲夜さくやの周りには、飾りつけられたパーティ会場が広がっていた。
呆あきれた表情を浮かべるレミリアに、使い魔と楽しげに話すパチュリー。
少し離れたところでは、美鈴めいりんとフランが料理を堪能たんのうしており、ほかにも客人たちの姿がある。
ひとりぼっちの少女など、もうどこにもいなかった。
紅魔館こうまかんのメイドとなったあの日から、孤独は咲夜と無縁の言葉になったのだ。
「……ありがとうございます、お嬢様」
「どうしてそこで謝罪じゃなくて
感謝の言葉が出るのかしら。
どんな夢を見ていたのかは知らないけれど、
あなたは私のものなんだから。
だから――一生私の隣にいなさい。いい?」
「まさか、お嬢様。私の夢のことを――」
「知らないと言ったはずよ。
はい、この話はこれでおしまい。
せっかくのパーティだもの。
余計なことは考えない。いいわね?」
「……お嬢様がそう言うのであれば」
そう、今は紅魔館こうまかんを祝うパーティの最中さいちゅう。
主とともに歩んできた軌跡を祝わずして何になるというのか。
「これからも、一生死ぬまで、貴方に
お仕えしますわ。レミリア・スカーレットお嬢様」
「当たり前でしょう? あなたは
死ぬまで私のものよ。十六夜咲夜」
永遠に紅い幼き月デーモンロードの杯に、完全で瀟洒な従者メイドは光り輝く雫をとくとくと注ぐ。
この紅魔館こうまかんで主とともに過ごす――そんな夢のような時間がいつまでも続くことを願い、
咲夜はレミリアにそっと料理を差し出した。