「今年の桜はせっかちねぇ、
そんなに焦らなくてもいいのに」
「いいじゃないですか、
お陰で早く桜が見れたんですし」
庭園を歩く幽々子の呟きに、花柄の着物を着込んだ妖夢が歩調を緩め、和傘を片手に振り返る。
十月、夏の熱気が過ぎ去り、木々が紅葉に彩られる季節。
広大な敷地に多くの桜を植えた白玉楼では、紅葉の赤よりも薄桃色の冬桜が彩りを添えていた。
幽々子の語るように、その本来の開花時期にはまだ少しだけ早い。
「そういう話じゃないの、もっと抽象的な話よ」
「桜の話じゃないんですか?」
「実は違うの、ふふふふ」
からかわれてるのか、本当に違うのか。
いつものことだが、幽々子の態度からは判断しかねる。
「妖夢は、花の気持ちを想像したことはある?」
幽々子の質問に、妖夢は首を傾げた。