「うーん……想像ですか。何回かはありますけど、
考えても分からないからやめました」
「そうよね、花の気持ちは花にしか分からないもの
せっかちな桜にも、
想いを巡らせることしかできないのよ」
幽々子は舞い飛ぶ蝶を指先に止めながら、少しだけ目を細める。
「お祭り、楽しめたみたいでよかったわ」
「は、はい」
花の気持ちと同じで、幽々子の気持ちは想像もつかない。
ただ、幽々子は……どこか寂しそうにしているようにも感じられた。
「……あの、幽々子様」
「なぁに、妖夢?」
脳裏に浮かんだ言葉は、会話の流れとは無関係のものだ。
あるいは幽々子も、こうして揺蕩たゆたう感情や言葉を、理屈ではなく感覚で口にしているのかもしれない。
「私はまだ未熟ですけど、
幽々子様を一人にはしませんから」
その言葉が正解だったかは分からない。
ただ、ふっと表情を緩めた幽々子が妖夢に手で触れてくれたことが、
その言葉への答えだったように妖夢は感じた。
「ありがとう。これからも頼むわね、妖夢」
「はい、幽々子様」
上機嫌に肩に手を回してきた幽々子に、妖夢は微笑む。
冷たい妖夢の身体を、暖かな感情が満たしていた。