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神霊廟
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博麗 霊夢:
ここが、近頃ますます里の人たちの
人気を集めている、あの聖人の道場ね。
博麗 霊夢:
あいつは商売敵としても要注意だし……。騒ぎを
起こさないか、しっかり見張っておかなくちゃ。
豊聡耳 神子:
ああ、誰が来たのかと思えば。
君だったか、巫女。いいところに来てくれたな。
博麗 霊夢:
へ? な、なに?
豊聡耳 神子:
実は、ちょっと困ったことになっていてね。
手を貸してくれないか?
博麗 霊夢:
え、まあ、いいけど……?
博麗 霊夢:
なんで私は、敵情視察に来た道場の厨房で
大鍋をかき回しているのかしら……。
豊聡耳 神子:
すまないな。食事の準備を手伝わせてしまって。
調理担当が、ちょうど出払ってしまっていてね。
豊聡耳 神子:
他の弟子たちも、別の仕事があるから頼めなくて。
君が来てくれて、本当に助かったよ。
博麗 霊夢:
あー。まあ、いいわよ。気にしないで。
博麗 霊夢:
道場の人たちに罪はないしね。このくらいなら、
言ってくれれば、いつでも手伝うわ。
豊聡耳 神子:
ありがとう。君は優しいな。
さすがは幻想郷の平和を守る、博麗の巫女。
博麗 霊夢:
な、なによ。急に。
豊聡耳 神子:
君は誰よりも強いからこそ、誰よりも優しい。
それに、誰に対しても平等だ。
豊聡耳 神子:
そんな君の在り方を、皆、たいへん
好ましく思っているよ。もちろん、私もね。
博麗 霊夢:
もう、なんなの。
褒めたって、お味噌汁しか出な……。
博麗 霊夢:
……いや、おかしいでしょ。
なんで、あんたが私を褒めるのよ。
博麗 霊夢:
そうか……、わかったわ!
これは、全部あんたの仕掛けた罠だったのよ!
豊聡耳 神子:
う、うん?
博麗 霊夢:
困った様子で油断させ、褒めまくって信用を得て、
私を道教に誘い込もうって魂胆なんでしょう!
博麗 霊夢:
あんたの策になんか、誰がハマるもんですか。
じゃ、私は食事の配膳してくるから!
豊聡耳 神子:
……ふふふ。まったく面白い。
さすがに巫女相手に、一筋縄ではいかないな。