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霧の湖
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ルーミア:
さっきから、誰かに見られてるような……。
あっ! そこだっ!
射命丸 文:
あちゃー。バレちゃいましたか。
こっそり撮影したかったのですが。
ルーミア:
天狗だー。
どうして、私を撮りたいの?
射命丸 文:
宵闇の妖怪が人間を襲う瞬間を
激写したく思いまして。
射命丸 文:
ルーミアさんといえば、人間の里でも噂の
“人喰い”ですからね。ちゃんと襲ってますか?
ルーミア:
えー? 全然襲ってないよ?
なんか最近、めんどくさいんだよねー。
射命丸 文:
ちょっと。それじゃ困りますよ!
貴方には、妖怪らしくしていただかないと。
ルーミア:
妖怪らしくって……。
そっちこそ、たまには人間を怖がらせてる?
射命丸 文:
私のことは、いいんです。
ここ最近は、そういう気分ではありませんので。
ルーミア:
ふーん。まあ、いいけどさ。
じゃあ、ひとつ提案なんだけどー。
ルーミア:
襲っていい人間を連れてきてよ。
それなら、私が楽ちんだしー。
射命丸 文:
記者の私に、人さらいをしろって!?
さすがに無理ですよ。そんなのっ!
ルーミア:
行っちゃった……。
ルーミア:
あれっ? 戻ってきた?
射命丸 文:
ええ。いいモノを持ってきましたよ。
外の世界から流れ着いたマネキンという人形です。
射命丸 文:
なかなか、リアルな見た目をしてるでしょう?
これを本物の人間と思って、襲ってみてください。
ルーミア:
そんな硬そうなの、食欲がわかないよ!
全然やる気が出ないんだけど?
射命丸 文:
いいからいいから。
はい、撮影スタート!
ルーミア:
うーん、こんな感じかなぁ……。
首筋にがぶーっ!
射命丸 文:
ちょっと! それじゃ迫力が足りないわ。
時代はバイオレンスですよバイオレンス!
ルーミア:
えっ? じゃ、じゃあ、こうかな……。
がおーっ! お前を食ってやるーっ!
射命丸 文:
まだまだ! もっとケダモノみたいに!
理性を捨てて、かみちぎるくらいの勢いで!
ルーミア:
が、がうがうっ! がぶがぶがぶーっ!
ルーミア:
はぁ……ここまで言うこと聞いてあげてるんだから、
後でちゃんとお礼してよね。もうーっ!