-------------- 妖怪の山 -------------- 橙: 見てください、藍様! 河童がくれたおもちゃ! スイッチ入れるだけで、動くんですよ。ほら! 八雲 藍: 本当だ。面白いねこれは。 どういう仕組みかな、ちょっと見てもいい? 八雲 藍: ふむふむ、電気を動力に……あら? これ、あと一、二回使ったら壊れてしまうな。 橙: ええー? こんなに動いてるのに、 そんなこと……って、わあっ!! 橙: ほ、ほんとに壊れちゃった……。 すごい、藍様! なんでわかったんです!? 八雲 藍: 回路が摩耗してるのが見えたんだ。 ここ、見える? 千切れている部分。 橙: 本当だ……、切れてる。 藍様は、これが切れるのを予測したんですか? 八雲 藍: ええ。スイッチを入れると、 横の部品と、こすれてしまっていたからね。 八雲 藍: こんな風に、物の状態や動きをよく見て、 計算すれば、ある程度のことは予測できるの。 橙: へぇー、まるで未来が見えるみたい! じゃあ、他のことも予測できるんですか!? 八雲 藍: そうだね……。なら、このあとの橙の予定を、 当ててみましょうか。 橙: 私の!? ちょ、ちょっと待って!! 橙: (いつも通り、お昼寝の予定だったけど……、 珍しく、おつかいに行くことにしよう!) 橙: ……よし、いいですよ! 八雲 藍: これから橙はお昼寝をする……と見せかけて、 あえて、おつかいに行こうと考えた。 橙: ええーーーー!? なんでわかったの!? わざと予定を変えたのに!! 八雲 藍: 未来を予測できるということは、橙が予定を 変更することまで予測できる、ということだよ。 橙: そ、そんな……。私の考えることは、 全部、藍様にお見通しってこと? 八雲 藍: そう。橙が何をどう考えたところで、 私の予測上では、未来は既に決定しているんだ。 八雲 藍: 私には、橙はその予測通りの行動を してるだけに見えるかな。 橙: 私は、何を考えても一緒で……、 藍様が予測した通りに、ただ動くだけ? 橙: だとしたら、私の意思ってほんとにあるの? うう、わかんない。私って、いったい何……? 八雲 藍: なーんて、ね。冗談だよ! 橙の考えをすべて予測なんて、できっこないよ。 橙: ふぇ? だって、さっき……。 八雲 藍: あれは、橙のことをそれなりに知ってれば、 当てられる程度のことだっただろう? 八雲 藍: 確かにこの世の物事すべてを把握して、 それを計算すれば、未来の予測は可能なはず。 八雲 藍: けど、すべて把握なんて、紫様でもできないさ。 だから、できる者なんて存在しない。 橙: ほ、ほんとに? じゃあさっきの話も、ぜーんぶ冗談ですか? 八雲 藍: ええ。橙の意思は、ちゃんと橙のもの。 だから、今まで通りの橙でいてくれるかな。 橙: そっかぁ……。はい、わかりました! じゃ、この後は、お昼寝しよーっと♪ 八雲 藍: そこは、おつかいに行ってくれても いいんだけどね……。