-------------- 人間の里 -------------- 魂魄 妖夢: はあ~。 魂魄 妖夢: きゃあっ! いたたた……。 上白沢 慧音: すまない。ぶつかってしまったな。 怪我はないか? 魂魄 妖夢: あ、あなたは寺子屋の先生……。 私こそすみません。ついボーっとしてしまって。 上白沢 慧音: どうした、悩みごとか? 私でよければ、話を聞くぞ。 魂魄 妖夢: 悩みというか、考えごとっていうか。 あの、最近ちょっと聞いたんですけど……。 魂魄 妖夢: この世界は、何者かによって、現実を精巧に 再現して作られたもの、という説があるんです。 魂魄 妖夢: 自分の意識も身体も存在してなくて、けれど それを認知することもできないという話で……。 上白沢 慧音: ふむ。 その手の話なら、私も聞いたことがある。 魂魄 妖夢: その話を聞いたとき、私が幼い頃に消えてしまった お師匠様のことを思い出したんです。 魂魄 妖夢: お師匠様がいなくなっても、 変わらずに日々は過ぎていって。 魂魄 妖夢: ある日ふと、思ってしまったんです。お師匠様は 最初からいなかったんじゃないかと……。 上白沢 慧音: ああ……、確かに、その人がいたと 証明するのは、容易なことではないな。 魂魄 妖夢: ということは、もしかしたら自分自身も、本当は いないのかもと考えたら、怖くなってしまって。 上白沢 慧音: ……魂魄妖夢。その悩みが、その恐怖こそが、 君がここにいるという証になるだろう。 魂魄 妖夢: ……え? 上白沢 慧音: 我々は、そもそも空虚な存在かもしれない。 しかし、だからなんだというのだ。 上白沢 慧音: 空虚な存在として迷い、悩み、苦しむことが、 己の存在を証明する、たった一つの手段だ。 上白沢 慧音: それがわかったら、思う存分悩むがいい! いい学びになるぞ。 魂魄 妖夢: わ、わかりました! 先生のお話を踏まえた上で、いっぱい悩んでみます!