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白玉楼
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西行寺 幽々子:
ああ、忙しい。この時期は幽霊たちが騒いで大変。
こっちへいらっしゃい。外に出ちゃだめよー?
西行寺 幽々子:
まだ階段の方にもいるわね……。
外は暑いのに元気なんだから、まったく。
西行寺 幽々子:
ほら、外に出たらだめよー。
みんな戻りなさーい。……ふう、結構いたのね。
古明地 こいし:
うわぁ! 幽霊が、すごい勢いで流れてく!
なんかキレイ!
西行寺 幽々子:
あら、あなた、いつの間に?
ここは、ふらふらする場所じゃないのよ?
古明地 こいし:
ねえ、今の幽霊がぶわーって動いたやつ、
あなたがやったの?
西行寺 幽々子:
そうよ。キレイに見えたかもしれないけど、
結構大変なのよ。
古明地 こいし:
大変? どうして?
西行寺 幽々子:
そうね……。休憩がてらに、お話ししましょう。
どうして大変なのか。
西行寺 幽々子:
お盆の時期は、ご先祖様の霊が騒ぎ出すのよ。
ご先祖様は、家を守ってきた人の幽霊だから。
古明地 こいし:
ご先祖様? それって本当にいたんだ。
空想上のものだと思ってた。
西行寺 幽々子:
ここにいる幽霊のほとんどは、
みんな誰かのご先祖様なの。
西行寺 幽々子:
お盆は、生前守ってた家に帰れる日だから、
みんな嬉しくて浮かれてしまうのよ。
古明地 こいし:
そうなんだ。知らなかった!
じゃあ、あなたも誰かのご先祖様?
西行寺 幽々子:
そうね……、そうなのかも。でも私は、
昔の記憶がないから、誰の先祖かわからないの。
古明地 こいし:
ふーん。じゃあさー、
どんな人のご先祖様だったらいいって思う?
西行寺 幽々子:
どんな人……。
西行寺 幽々子:
そうね。それなら、風流な人かしら。
和歌とか上手な子孫がいたら、素敵じゃない?
古明地 こいし:
ふーん? なんか楽しそう。
本当にそうだといいね!
古明地 こいし:
それじゃ、私もう帰るね。ばいばーい!
西行寺 幽々子:
気をつけて帰るのよー。
西行寺 幽々子:
花見れば そのいはれとはなけれども
心のうちぞ 苦しかりける
西行寺 幽々子:
本当に、そうだったらいいのに……。