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白玉楼
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西行寺 幽々子:
今日もうちの桜はキレイねぇ。
……それで、なんのご用かしら?
十六夜 咲夜:
お嬢様がここを貸し切って、
お花見がしたいと言うので、そのご相談に。
西行寺 幽々子:
なるほどね。それくらいなら全然いいわよ。
けど、タダでというわけにはねえ。
十六夜 咲夜:
もちろん、お代はお支払いします。
それとも、食べ物のほうがよいですか?
西行寺 幽々子:
そうね、食べ物がいいわ。じゃあ、冥界では
滅多に食べられないものを用意してくれる?
西行寺 幽々子:
こちらの望みをピッタリ当てられたら、
貸し切りでお貸しします。面白そうでしょ?
十六夜 咲夜:
わかりました。冥界では食べられないものか……。
厨房をお借りします。少々お待ちを。
西行寺 幽々子:
どうぞどうぞ。お料理に必要なら、
なんでも使っていいからね。
十六夜 咲夜:
お待たせしました。ハンバーグセットです。
洋食は、あまり食べないんじゃない?
西行寺 幽々子:
確かに、いつも和食が多いからね。
うん、とっても美味しいわ!
西行寺 幽々子:
でも残念。これは、食べようと思えば、
冥界でも割と食べられるのよね。
十六夜 咲夜:
ハズレか……。となると、あれかしら?
また、お時間いただいても?
西行寺 幽々子:
ええ、いくらでも待ってるわ。
美味しいものを、お願いね。
十六夜 咲夜:
お待たせしました。山女魚の踊り食いになります。
釣りたて数秒、鮮度抜群よ。
十六夜 咲夜:
生きたものをそのまま食す料理なんて、
さすがに冥界にはないでしょう?
西行寺 幽々子:
ええ、確かにそうね。こんな料理はじめてよ。
……ん~! 美味しい!
西行寺 幽々子:
だけど、これも違うわ。だって、こんなの
冥界どころか、どこでも食べられないでしょ?
十六夜 咲夜:
これもハズレ? 困ったわね。
冥界で食べられないものなんて、他に……。
西行寺 幽々子:
まあ、色々と面白いものを食べさせてくれたし、
正解は教えてあげるわ。正解はね……。
西行寺 幽々子:
……ズバリ! お漬物!
十六夜 咲夜:
漬物ですって? なんで……。
それくらい、冥界にもあるでしょう?
西行寺 幽々子:
それがねえ、冥界では、お漬物は作れないのよ。
西行寺 幽々子:
霊夢が言うには、発酵には神様の力が必要で、
冥界にはその神様がいないんじゃないか、って。
西行寺 幽々子:
とにかく、買ってこないと食べられないから、
冥界じゃ、かなり貴重な食べ物なのよ。
十六夜 咲夜:
そうだったの……。難しく考えすぎたわね。
西行寺 幽々子:
じゃ、お花見がしたいなら、お漬物をお願いね。
あ、バケツいっぱいあっても大丈夫よ?