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白玉楼・書斎
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西行寺 幽々子:
この部屋から、変な物音が……あら?
霧雨 魔理沙:
おおー! 古い本がこんなに!
こりゃ期待以上の収穫がありそうだ!
霧雨 魔理沙:
マジックアイテムになりそうな物を
探しに来たんだけど、ここはアタリだな。
霧雨 魔理沙:
それにしても、この本、何が書いてあるんだ?
花の下……春……うーん、崩し字は難しい……。
西行寺 幽々子:
「願わくは 花の下にて 春死なん
その如月の 望月の頃」
西行寺 幽々子:
その本は、山家集ね。有名な歌集よ。
西行寺 幽々子:
死ぬなら桜の綺麗な時、特に如月の満月の頃、
って意味ね。それより、ここで何してるの?
霧雨 魔理沙:
……えっ!? あ、いや、
私は本を借りようと思っただけなんだが……。
西行寺 幽々子:
どうだかね?
あなたの手癖、噂になっているわよ?
霧雨 魔理沙:
い、いやいや、そんなまさか。
風の噂を鵜呑みにするのは良くないなぁ~。
霧雨 魔理沙:
それにしてもこの和歌、
綺麗な響きだな。ちょっと暗いけど。
霧雨 魔理沙:
如月の望月の頃って、2月の15日くらいだろ?
旧暦にしても、桜の時期には早いような……?
西行寺 幽々子:
それは、詠み手が熱心な仏教徒だったからよ。
2月15日は、お釈迦様が入滅した日でね。
西行寺 幽々子:
熱心な仏教徒だった詠み手は、同じ日に
逝きたいと願って、2月16日に亡くなったのよ。
霧雨 魔理沙:
へぇ……。
何事も、願えば叶うってわけか。
霧雨 魔理沙:
そういや、お前は死にたいときに死ねたのか?
亡霊ってことは、生前があるんだろ?
西行寺 幽々子:
そうねぇ。私は生前の記憶がないから、
その質問には答えられないんだけど……。
西行寺 幽々子:
せめて、桜の中で死ねていればいいな、
とは思うわね。