--------------
魔法の森
--------------
八雲 藍:
急に呼び出して、どうしたんだ?
貴方が私に用なんて、珍しいな。
霧雨 魔理沙:
よく来てくれたな! 実は頼みがあってさ。
魔法で尻尾の毛を使いたいんだ。くれないか?
八雲 藍:
え、いやだけど……。
霧雨 魔理沙:
そう言わずに、頼む!
霊験あらたかな、狐の毛が必要なんだよ。
八雲 藍:
……では、油揚げを桶いっぱいにもらおうか。
それなら、分けてやってもいい。
霧雨 魔理沙:
ああ、いいぜ。
それくらいだったら用意してやるよ。
八雲 藍:
いつになく真剣だな。何に使うんだ?
霧雨 魔理沙:
森の外れ、杉の樹の周囲に瘴気が溜まっててな。
一帯の植物が枯れたり、動物も元気がないんだ。
霧雨 魔理沙:
九尾の力を込めた魔法で追っ払えば元通り。
というわけで、尻尾の毛が必要なんだよ。
八雲 藍:
そうだったのか! それなら最初から、
そう話してくれればいいのに……。
八雲 藍:
杉の大樹になら、私も思い入れがある。
油揚げもいらないよ。
霧雨 魔理沙:
お、本当か!? やったぜ、ありがとな!
よし、そうと決まれば……。
八雲 藍:
……クシ、大きくない?
霧雨 魔理沙:
いやあ、ちょうど換毛期だって聞いてさ。
それじゃあ、そのもふもふ。たんまりもらうぜ!
八雲 藍:
か、換毛期でよかった……。こほん!
それで、魔法はうまくいきそうか?
霧雨 魔理沙:
ちょっと待ってくれよ。
これで、こうして……。よし、成功だ!
八雲 藍:
よかった……。瘴気が晴れたな。
杉の大樹も無事なようで何よりだ。
霧雨 魔理沙:
そういえば、思い入れがあるって言ってたな。
あの杉に、何か思い出でもあるのか?
八雲 藍。:
……ひどい嵐の夜に、凍え死にそうなところを
一晩だけ、樹の洞に泊めてもらったんだ。
霧雨 魔理沙:
……なるほど。助けてもらったってわけだ。
だったら、元気になってくれてよかったな。
霧雨 魔理沙:
さて、ひと仕事終えたし、
せっかくだから、杉の下で昼寝でもするかな。
八雲 藍:
では、私も。尻尾もスッキリしたし、
気持ちよく眠れそうだ……。