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魔法の森
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八雲 紫:
この森は相変わらず、妙な植物が多いわねぇ。
あら? あそこにいるのは……。
宇佐見 菫子:
もぐもぐ……って、わぁ!? 紫さん!?
どうしたの、こんなとこで。
八雲 紫:
ふふふ、それを聞きたいのは私のほうよ。
そんな甘い匂いをさせて、どうしたのかしら?
宇佐見 菫子:
実は、外の世界からお菓子を
持ってきてて……紫さんにも一つあげるね。
八雲 紫:
もぐもぐ……独特な食感ね。けど、なんとなく
覚えがあるような……夢で食べたのかしら?
宇佐見 菫子:
グミっていうんだ。
この歯ごたえが、クセになるんだよね~。
八雲 紫:
グミ……ああ、これもそうなのね。その名前の
お菓子なら、外の世界で食べたことがあるわ。
宇佐見 菫子:
そっか、紫さんは、
幻想郷と外の世界を自由に行き来できるんだっけ。
八雲 紫:
ええ。けど、以前食べたものは、これとは形が違ったわ。
たしか私の身長よりも、長かったのよ。
八雲 紫:
また食べたいわね。
今度、外の世界に行ったら、探してみようかしら。
宇佐見 菫子:
あー、あれかぁ。たしか機械が壊れて、
もう作ってないって聞いたような?
八雲 紫:
あら、そうなの?
そう聞くと、ますます食べたくなるわね。
宇佐見 菫子:
それにしても、紫さんと外の世界のお菓子の
話をしてるって、変な感じ。
宇佐見 菫子:
なんだか、外の世界にいる普通の女の子と
お友達になったみたい。
八雲 紫:
……そうして二人で、カフェテラスで
新作ケーキをつつきながら、おしゃべりするのね。
宇佐見 菫子:
あはは、いいね! 今度、近所に
テラス席のあるカフェがないか探してみよっと!
八雲 紫:
ま、とはいっても私は幻想郷の大妖怪よ。
普通の友達が欲しいなら、外の世界で作りなさい。
宇佐見 菫子:
え~、冷たいなあ。
そう言わずに、たまには付き合ってよ~。
八雲 紫:
あらあら、ワガママねぇ。
う~ん、どうしようかしら。
八雲 紫:
そうだ、ながーいグミを見つけてきてくれたら、
付き合ってあげるわよ、菫子。
宇佐見 菫子:
だから、それは無理だって!
もう、紫さんのいじわる!
宇佐見 菫子:
いや、ちょっと待って。製造が終わったなら、
そのうち幻想郷に流れて来るかも? それなら……。
八雲 紫:
確かに、そうかも知れないわ?
それをすぐ思いつくあたり……。
八雲 紫:
だいぶ幻想郷に馴染んだのね、あなた。