-------------- 魔法の森・香霖堂周辺 -------------- 森近 霖之助: 霊夢と魔理沙も、やっと帰ったか。 ふぅ……これで虫干しの続きができるな。 森近 霖之助: それにしてもあの二人、 また何も買わないで帰ったな……まったく。 八雲 紫: あら? どうして店に来て、 買い物をせずに帰ってはいけないの? 森近 霖之助: わっ、どこから現れたんだ!? 八雲 紫: ちょっと、そこのスキマから、ね。 それより、私の質問に答えてくれない? 森近 霖之助: だって、店は物を買うための場所だろう? 香霖堂をなんだと思ってるのか。 八雲 紫: 厳しい意見ね。 ねぇ、ビュリダンのロバって知ってる? 森近 霖之助: ビュリダンのロバ……? なんだい、それは? 八雲 紫: 外の世界の寓話よ。二股の道の同じ距離に、同じ量の 飼い葉を置いて、ロバに好きなほうを選ばせるの。 八雲 紫: もし、あなたがロバだったら、 どちらの道を選ぶかしら? 森近 霖之助: また急な質問だね。距離も量も同じなら、 どちらを選んでも結果は変わらないはずだけど。 八雲 紫: そうね。だけど、選ぶ理由を見つけられなかった ロバは、どちらも選べずに餓死してしまうの。 八雲 紫: つまり、理由がなければ何も選べない。 そういう場合もあると伝えるための寓話よ。 森近 霖之助: 言いたいことはわかったよ。 けど、ちょっと大げさじゃないか? 八雲 紫: そうかしら? 買わないという行動も 選択の一つだし、それは尊重すべきと思うのよ。 八雲 紫: だって、買うか買わないかで悩んで、 ここで餓死されたら困るでしょう? 森近 霖之助: それより。非売品の コンピューターの上に座るの、やめてもらえないか? 八雲 紫: ふふふ、物を買う場所なのに、こんなに 非売品が置いてある。これもまた選択の一つね。 森近 霖之助: いきなり来て、なんだったんだ今のは……。 というか彼女も、何も買わずに帰ったな。 森近 霖之助: まったく……みんな、 うちの店をなんだと思っているんだか。