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寺子屋
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上白沢 慧音:
それでは、授業を始めるぞ。今日は、みんなが
楽しみにしていた調理実習。講師はこの人……、
十六夜 咲夜:
十六夜咲夜です。慧音先生に頼まれて、
ハイカラな料理を教えにきました。
十六夜 咲夜:
今日作るのは、甘くて美味しいケーキよ。
ではまず、新鮮な卵を十個……、
十六夜 咲夜:
空中に投げ上げて、ナイフで一気に割ります。
上白沢 慧音:
……は?
十六夜 咲夜:
はい、できましたね? 次はメレンゲ作り。
卵白を泡立てていくんだけど……、
十六夜 咲夜:
見ていて楽しい作業じゃないし、時を
止めている間に、ササッと済ませちゃいましょう。
上白沢 慧音:
ちょっと待て!
さっきから、空中だの時だのと、工程がおか……
上白沢 慧音:
しい……って、卵白が一瞬でふわふわに!?
お、おい。お前、授業の主旨わかってるのか?
十六夜 咲夜:
ええ。簡単で、すぐできるケーキの作り方を
教える、でしょ? ちゃんとやってるじゃない。
十六夜 咲夜:
それに、生徒たちを見て?
子供A:
咲夜先生、すごーい!
僕も卵割るぞ! おりゃー!
子供B:
ちょっとー、ぜんぜんできてないじゃん!
私の神速泡立てのほうが、ずっとスゴいよ! そりゃー!
子供A:
ウワーッ!? ぜんぶこぼれてるよー!
十六夜 咲夜:
……ね? みんな、とても楽しそう。
上白沢 慧音:
大惨事じゃないか! 出だしからコレって……、
いや、今ならまだ巻き返せるか?
子供B:
咲夜せんせー! 次は? 次はなにするのー!?
子供A:
僕、もっとカッコいいワザやりたい!
ズバーッてなって、ドカーンってなるやつ!
十六夜 咲夜:
ふふ、いいわよ。それじゃあ、火とナイフが
舞い踊る、先生とっておきの技を見せてあげる。
上白沢 慧音:
ひ、火とナイフ……!? やめろーっ!
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1時間後
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十六夜 咲夜:
……というわけで、はい。
本日のケーキ、完成したものが、こちらです。
子供B:
わー! 咲夜先生が作ったケーキ、おいしそー!
私たちのは、みんな炭になっちゃったのに~。
上白沢 慧音:
まさか、生徒たちのケーキが全滅するとは……。
くっ……、講師の人選を誤った、私の失態だな。
十六夜 咲夜:
慧音。今日は、思いのほか楽しかったわ。
次の調理実習の時も、また呼んでね?
上白沢 慧音:
あぁ~……。そ、そうだ。ケーキを食べようか?
みんな! いま先生が切り分けてやるからなっ!
十六夜 咲夜:
そうねえ。次は、パイなんてどうかしら?
材料は季節の果物で……ふふ、楽しみだわ。