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迷いの竹林
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上白沢 慧音:
ここにいたのですね、妹紅。
あら、野宿の準備ですか?
藤原 妹紅:
ああ、ちょうど済ませたところだ。
それより、今日はどうした?
上白沢 慧音:
実は、貸本屋で楽しそうなものを借りてきたのです。
これを妹紅と試してみたくて。
藤原 妹紅:
なんだこりゃ?
長い布っきれに、紐がついてるけど。
上白沢 慧音:
聞いたところ、これはハンモックと言って、
野宿で使う寝床だそうです。
上白沢 慧音:
使い方を記したものと一緒に、
外の世界から流れ着いたらしくて。
藤原 妹紅:
へぇ、これが寝床か。
こんな薄っぺらいの、どうやって使うんだ?
上白沢 慧音:
ええと……「両端の紐を使い、二本の柱のあいだに
吊るすように設置する」と書いてあります。
上白沢 慧音:
ここらで柱の代わりになりそうなのは、竹ですかね。
こっちの竹とこっちの竹に紐をくくりつけて……と。
藤原 妹紅:
おおーっ! これに乗って寝るのか。
なんだか、楽しそうだな。
藤原 妹紅:
どれどれ、ちょっと腰をかけてみよう。
……って、うおっと!?
上白沢 慧音:
ああっ! 大丈夫ですか、妹紅?
藤原 妹紅:
いてて……落っこちた。
どうなってるんだ?
上白沢 慧音:
竹がしなるせいで、不安定になるみたいです。
どうやら柱を変えたほうがよさそうですね……。
藤原 妹紅:
そういうことか。
だったら、これはこのままにしておいてくれ。
藤原 妹紅:
寝ながらバランス感覚を鍛えられるなんて、
夢のような寝床じゃないか。
上白沢 慧音:
やれやれ、これは修行道具じゃないのですよ?
また落ちて、ケガでもしたら……。
藤原 妹紅:
大丈夫だって。よし、今度は横になってみよう。
背中からそーっと……うわぁっ!
藤原 妹紅:
ぐわっ! ……いっててて。こりゃ、ひどい。
布っきれに放り出されるとは。
上白沢 慧音:
だから言ったでしょう。
背中から派手に落ちて……ぷっ、ふふふ。
藤原 妹紅:
わ、笑うなって。
上白沢 慧音:
ごめんなさい、妹紅。
でもそれ、ちょっと楽しそうですね。
藤原 妹紅:
お、慧音もやってみるか?
眠れはしないけど、けっこう楽しいぞ。
上白沢 慧音:
いえ、私は……。
上白沢 慧音:
……その。
少しだけ、やってみてもいいでしょうか?
藤原 妹紅:
もちろん。慧音が持ってきてくれたものだし、
好きなだけ遊びなよ。
上白沢 慧音:
ふふっ。寝床を用意したつもりだったのに
これでは意味がありませんね。