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迷いの竹林
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因幡 てゐ:
うーん。雨上がりの竹林って、しっとりしてて
気持ちいいわー。昼寝でもしようかしらー。
古明地 こいし:
兎さん、みーつけた。
因幡 てゐ:
うわっ!? いきなり何よあんた?
のんびり気分が、台無しじゃない。
古明地 こいし:
ねーねー。貴方って、人を幸運にする力を
持ってるんでしょ? 私に使ってくださいな。
因幡 てゐ:
はあ? なんでそんなこと。
古明地 こいし:
私、感情がないのよー。だから、幸せとか、
満足とか、よくわからないんだけどー……。
古明地 こいし:
兎さんの能力は、その人にとって
幸運な出来事を引き起こすでしょ? すなわち!
古明地 こいし:
その力を使えば、私が何を幸せに思うかも
丸わかりだー! ってことで、お願いしまーす。
因幡 てゐ:
幸運がほしいんじゃなくて、何が幸運なのかを
知るのが目的ってこと? なんじゃそりゃ。
因幡 てゐ:
なんか面倒くさい奴。
昼寝の邪魔だから帰りな、シッシッ。
古明地 こいし:
えー。いいじゃん一回だけー。
ねーねー、ねーねーねー。
因幡 てゐ:
あーもー、うっとうしい!
……ほら、今使ったよ。これで満足?
古明地 こいし:
何も起きない……ね?
古明地 こいし:
つまんなーい。心がすっからかんだと、
幸せもないってことかなー……あれ?
古明地 こいし:
うわー、おっきい虹!
これが私の幸運? へー……。
古明地 こいし:
えへへ、なんか素敵だねー。私、虹の
根元を探しにいこっと。じゃあね、兎さーん!
因幡 てゐ:
やっといなくなったか。
しかし、虹ねぇ……。
因幡 てゐ:
私の力が呼んだ幸運か、それとも、
雨上がりが偶然に起こした自然現象か……。
因幡 てゐ:
真実は、誰にもわからない。
路傍の小石の心は、空のみぞ知る……なんてね。