--------------
霧の湖
--------------
伊吹 萃香:
静かに揺れる湖面を眺めながらの一杯……。
う~ん、美味しいねぇ。
チルノ:
おおー! いい匂いがすると思ったら、
うまそうなお酒じゃん。あたいにもよこせー!
伊吹 萃香:
え~? これ、珍しい酒なんだよなあ。
……っていうか、氷の妖精のそばって寒いね。
伊吹 萃香:
宴会にぴったりの春が、遠ざかってく気がする。
あっち行っててくれない? しっしっ。
チルノ:
はぁ~!? 失礼な鬼だなっ。
そもそも、ここはあたいのシマなんだけどっ!
チルノ:
そんなケチくさい奴なんて、こうだっ。
酒を抱えたまま、凍っちゃえ~!
伊吹 萃香:
寒っ! いきなり何すんだ!
……わっ、私のお酒、凍っちゃってる!?
伊吹 萃香:
これじゃもう呑めないじゃん!
まったく、だから寒いのは嫌なんだ!
チルノ:
大人しく渡さないからこうなるんだ。
今さら後悔したって、無駄なんだからね!
伊吹 萃香:
くっそ~。これじゃ味も落ちてるだろうなぁ。
ぺろっ……ん?
伊吹 萃香:
……美味しい!! お酒なのに、氷菓子みたい。
冷たくて、とろとろでシャリシャリだ~!
チルノ:
あれ、えっ?
伊吹 萃香:
天才だよあんた! これ、大革命だ!
お酒に、こんな楽しみ方があったなんて。
チルノ:
……そう? なんだかよくわかんないけど、
あたいってすごい?
伊吹 萃香:
すごいすごい! ほら、あんたも呑みなよ。
自分で呑まないなんて、もったいないって。
チルノ:
え~、調子いいなぁ。まあ、そんなに言うなら
付き合ってあげてもいいよ?
チルノ:
わっ、ほんとにうまっ! こんなところでも
才能を発揮しちゃうなんて、さっすがあたいね!
伊吹 萃香:
みぞれ酒、最っ高!
寒いのとお酒の相性も、悪くないじゃん♪
伊吹 萃香:
ねえねえ、こっちのお酒も凍らせてみてよ。
今度は、ちょっと温度を変えてみたりして。
チルノ:
ふふん、そう頼まれちゃ仕方ない。
あたいの偉大さにカンゲキしてよね。えいっ!
伊吹 萃香:
わわ、やっぱり寒っ。……でも、
こんな一風変わった雪見酒も、乙なもんだねぇ。