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紅魔館
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伊吹 萃香:
っはぁ~、美味しい!
この赤ワイン、いくらでも呑めちゃうよ。
レミリア・スカーレット:
ふふ、好きなだけ呑んでちょうだい。
今日は私も、とことん付き合うから。
伊吹 萃香:
いや~、急に来たのに悪いねぇ。
それじゃ遠慮なく!
レミリア・スカーレット:
こうしてると、初めて会った日を思い出すわね。
ほら、はた迷惑な異変をあなたが起こした時の。
伊吹 萃香:
あはは、懐かしいなあ。たかが吸血鬼が、
やけにでかい口をきくもんだって思ったっけ!
レミリア・スカーレット:
よく覚えてるわ。泥臭い妖怪のくせに、
高貴なる吸血鬼の私に、大層な振る舞いをしていたわよね。
伊吹 萃香:
血をすするしか能がない日陰の種族の分際で。
その面の皮の厚さは、あの時と変わってないみたいだなあ。
レミリア・スカーレット:
あら、よく聞こえなかったわ。空っぽの脳みそで
優雅さの欠片もない鬼風情が、何か言った?
伊吹 萃香:
どうやら、よほど命が惜しくないみたいだね。
今日こそ決着つけてみる?
レミリア・スカーレット:
こちらの台詞よ。……そうね。また弾幕ごっこというのも
芸がないし、今回は趣向を変えてみない?
レミリア・スカーレット:
せっかくだもの。このワインの呑み比べで、
先に音を上げた方が負け、というのはどう?
伊吹 萃香:
いいねぇ。その勝負、乗った!
誰に喧嘩を売ったのか、思い知らせてあげるよ。
伊吹 萃香:
ずいぶんハイペースで呑むじゃない。
私にここまで食らいつくなんて、やるね?
レミリア・スカーレット:
当然でしょ。あなた、気づいてないの?
このワインの、目を惹く鮮烈な紅に。
レミリア・スカーレット:
紅魔館で出されるお酒は、元は全部人の血なの。
血を飲むのは、吸血鬼の専売特許でしょう?
伊吹 萃香:
なーに言ってんの。どう考えても酒の味でしょ。
つまんない嘘ついたって、無駄だってば。
伊吹 萃香:
だいたい、人の血がこの酒ほど美味しいんなら、
誰も彼も吸血鬼になっちゃうよ~♪
レミリア・スカーレット:
ふふ。さすがは鬼ね。
酒については目ざとい。
伊吹 萃香:
しかし、ほんとに上等なワインだよね。
すごく豊潤でまろやか。趣味がいいよ、あんた。
レミリア・スカーレット:
当たり前でしょう? 貴族の誇りにかけて
客人へのもてなしは最上級しかありえないわ。
レミリア・スカーレット:
外も暗くなってきたわね。そろそろ音を上げたら?
夜は吸血鬼の領分。ここからは、私の時間よ。
伊吹 萃香:
冗談。私の土俵で勝負してるってのに。
鬼の誇りにかけて、酒で負けられないでしょ?
レミリア・スカーレット:
ふふ、そうこなくっちゃ。簡単に終わっては
つまらないもの。長くて素敵な夜になりそうね?
十六夜 咲夜:
朝ですよ~。お嬢様、お客人も。
……うわ、すごいお酒の匂い。
十六夜 咲夜:
大量の空き瓶で足の踏み場もないわ。……まったく、
お二人とも、気持ちよさそうに眠っちゃって。