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迷いの竹林
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伊吹 萃香:
たまには竹林の散歩もいいね。
っと、あれは……。
藤原 妹紅:
えーと、これでだいたい、まとまったな。
あとは火をつけて……。
伊吹 萃香:
あんたは、蓬莱人の。
何してんの? そんながらくたの山の前で。
藤原 妹紅:
ああ、これは里の人間たちが出した不用品さ。
燃やして処分するところだ。
伊吹 萃香:
あんた、炎を使うんだっけ? それなら
私も出せるよ。お酒を口に含んで……んぐ。
藤原 妹紅:
うん? 私と火力対決でもしようってのか?
面白い、受けて立つぞ。
伊吹 萃香:
おっ、楽しそうだねぇ。じゃあ先攻はいただき!
いっくよー……って、ん?
伊吹 萃香:
このお猪口、まだ使えそうだねえ。
柄も洒落てるし……燃やすの、もったいないね。
藤原 妹紅:
もったいない、か。確かにそうして見ると、
他にも使える物があるかもしれないな。
藤原 妹紅:
おっ、この金網も、直せば使えそうじゃないか?
焼きものの料理によさそうだ。
伊吹 萃香:
へえ、あんた、がさつそうなのに
意外と家事できるんだね。感心したよ。
藤原 妹紅:
がさつそうは余計だ。
おお、この甕は漬物なんかにいいかもな。
伊吹 萃香:
じゃあこの石は、漬物石に?
藤原 妹紅:
確かによさそうだ。それも持って帰ろうか。
……って、不用品の処分はどこへやらだな。
伊吹 萃香:
あはは、いいじゃん。だいたい、必要や
不要だなんて、いくらでも変わるものだし。
伊吹 萃香:
がらくたも宝物も、時代次第で視点次第。
長く生きてると、なおさらそう思わない?
藤原 妹紅:
確かにな。私にとってはもちろんそうだが……、
鬼にとっても、似たようなものなのか?
伊吹 萃香:
そうだねー。私もずいぶん長い間、
人間の営みを見てきたもんだ。
伊吹 萃香:
これで一通り、見終わったかな?
大満足だよ~!
藤原 妹紅:
なんだか残りも、もったいなくなってきたな。
こいつらも、見ようによってはきっと……。
伊吹 萃香 :
だったら、私が萃めて河童の所に持ってくよ。
改造したら、使えるんじゃない?
藤原 妹紅:
それは名案だ。じゃ、そっちは任せた。
……いつの間にやら、収穫が甕いっぱいだな。
伊吹 萃香:
漬物、上手く漬かったら食べに行かせてね~。
藤原 妹紅:
ああ。その時は酒を準備するから、
お前もそのお猪口を持ってこいよ。
伊吹 萃香:
最高、そうこなくっちゃ! 長生き同士、
こうして仲良くするのもいいもんだね。
藤原 妹紅:
そうだな。……こういう縁は、
なかなか不要にならないことだしな。