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紅魔館
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射命丸 文:
どうでした? 今回の新聞は。
なかなか面白いネタ揃いだったと思うんですが。
レミリア・スカーレット:
そうね、それなりに。相変わらず、
真実の一側面しか書いてないところとかね。
射命丸 文:
まあ、それはそうですよ。記事にすることで
一つの真実を確定させているわけですからね。
射命丸 文:
こんな話、ご存じです? 『箱を開けてみるまで
生きてるのか、死んでるのかわからない猫』の話。
レミリア・スカーレット:
なに? 猫?
射命丸 文:
より正確には『生死の状態が重なり合っている猫』
らしいですが。私も聞きかじっただけなので……。
レミリア・スカーレット:
ふーん。で、それが新聞と
どう関係があるっていうのかしら。
射命丸 文:
真実というものも、箱の猫と同じなんですよ。
様々な状態が重なり合っていて、よくわからない。
射命丸 文:
ですから、我々新聞記者が、記事という形で
一つの真実を観測し、わかりやすくしているんです!
レミリア・スカーレット:
でもそれって、記事にしなかった
他の真実を、闇に葬るってことじゃ……。
レミリア・スカーレット:
……ま、この幻想郷においては、
観測しない方がいい真実もあるか。
射命丸 文:
ええ、その通りです。真実を暴く
正義の記者としては、まったく遺憾ですがね。
射命丸 文:
ところで、さっきの猫ですが、外の世界では
多くの人が頭を悩ませた問題だそうですよ。
レミリア・スカーレット:
箱の中の猫は生きてるか死んでるかって?
暇ねぇ。猫の運命なんか、簡単に変えられるのに。
レミリア・スカーレット:
それに、生きていて死んでいるんでしょ?
そんなの化け猫に決まってるじゃない。
射命丸 文:
ねえ、レミリアさん。真実を観測するために、
ちょっと化け猫を箱に詰めてみましょうか?
レミリア・スカーレット:
ふふ。ちょっとは退屈しのぎになりそうね。
それじゃ、行きましょ!