--------------
魔法の森
--------------
射命丸 文:
ふ~、取材完了。これで霧雨魔法店については、
いい記事が書けそうね。……ん?
射命丸 文:
今、森の奥に人影が……?
珍しいわね。もしかして、人間かしら。
伊吹 萃香:
うーんと、これは……食べられるやつか?
わからないのは、省いておくに限るな……って、
伊吹 萃香:
おや、そこにいるのは天狗じゃないか!
おーい、何してんの?
射命丸 文:
何してるって、それはこっちのセリフですよ。
人影が見えたので、見にきたんです。
射命丸 文:
まあ貴方なら、心配いりませんね。
それじゃあ私は、失礼しま……。
伊吹 萃香:
まあ、待ちなよ。今ね、キノコを集めてるんだ。
ちょっと手伝ってくれないかな?
射命丸 文:
ええ? キノコを? できれば早く帰って、
記事を書き上げたいのですが……。
伊吹 萃香:
まあまあ、このカゴ一杯分でいいからさ。
食べられるものだけ、集めてほしいんだ。
射命丸 文:
はぁ。仕方ありませんね。
上司の頼みじゃなければ、断ってますよ?
伊吹 萃香:
上司と言っても、“元”だけどね。
それじゃ、よろしく~。
射命丸 文:
ふぅ。結構集まりましたね。
こんなものでどうです?
伊吹 萃香:
おおー、さすが天狗!
素早いねぇ。助かったよ。
射命丸 文:
もう。集めたの、ほとんど私じゃないですか。
その間、貴方は何してたんですか?
伊吹 萃香:
いやぁ……ちと酔いすぎて、食べられるキノコと
毒キノコの区別がつかなくてね……あはは。
伊吹 萃香:
さて、それじゃあ帰るとするかね。
よいしょっと……おっとっと。
射命丸 文:
ちょっと、フラフラじゃないですか!
私が持ちますよ。どちらまで運びましょう?
射命丸 文:
そういえば、目的を聞いていませんでしたね。
こんな大量のキノコ、何に使うんですか?
伊吹 萃香:
んあ、言ってなかったっけ?
実は鯢呑亭が、食材不足で困ってるらしくてね。
伊吹 萃香:
たまには、差し入れでもしてやろうと思ってさ。
ここのキノコなら、いい食材になるだろ?
射命丸 文:
なるほど、それは名案ですね。
てっきり、酒のつまみにでもするものかと。
射命丸 文:
あそこには私もお世話になってますし、
お手伝いできてよかったです。
射命丸 文:
あーあ。最初からそのことを知っていれば、
今の三倍の速さで集めたのになぁ。
伊吹 萃香:
あっはっは、言うじゃないの!
持つべきものは、“元”部下だねぇ~。