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魔法の森
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風見 幽香:
泥棒さんは、こっちのほうに逃げ込んだわね。
この森のどこかにいるのかしら。
風見 幽香:
それにしても、私の花を掘り起こして盗むなんて、
いい度胸じゃない。見つけたら必ず……あら?
霧雨 魔理沙:
やれやれ。材料を調達するだけで、一苦労だな。
けど、家に帰って調合するのは楽し……。
風見 幽香:
奇遇ね、魔理沙。そんなに手を泥だらけにして、
どうしたのかしら?
霧雨 魔理沙:
げっ、幽香!? えーっと、欲しかった植物を
見つけたから、掘り起こしてたんだよ!
風見 幽香:
ふ~ん。もしかして、貴方の持ってるその花?
偶然ね。私も、その花を育ててるの。
霧雨 魔理沙:
へ、へぇ~。珍しいこともあるもんだな。
私は、このあたりで見つけたけど!
風見 幽香:
あらそう。でもその花、確かに珍しいけど、
眺める以外に、使い道なんてあったかしら?
霧雨 魔理沙:
えっ、この花は魔法薬の基本となる材料だろ?
花びらは白いのに、煎じると黄色の煮汁が出て……。
霧雨 魔理沙:
それを入れて混ぜると、反発し合う性質の
素材でも、うまく馴染むようになるんだ。
霧雨 魔理沙:
やれやれ。自分で育てた花なのに、
そんなことも知らないのか……って、あー!
風見 幽香:
ふふふ、あっさりボロを出して。
魔理沙、貴方がその花を盗んだのね。
霧雨 魔理沙:
い、いやぁ~。あはは……。
それはその……。
風見 幽香:
私の花に手を出した代償は、高くつくわよ。
どうやって、落とし前をつけてもらおうかしら。
風見 幽香:
……と、言いたいところだけど、
今回は勘弁してあげるわ。長い付き合いだしね。
霧雨 魔理沙:
えっ、いいのか!?
風見 幽香:
ふふ。魔法薬の説明が完璧だったからね。
そのご褒美よ。
霧雨 魔理沙:
お前……本当に幽香か?
風見 幽香:
なによ。
私にだって、そういう日くらいあるわ。
風見 幽香:
あんなに小さかった子が、
ずいぶんと大きくなっちゃってねえ……。
霧雨 魔理沙:
は、はぁ~?
なんだよ、急に年上ぶっちゃって。
霧雨 魔理沙:
お前ら妖怪と違って、私は毎日成長してるんだ。
んじゃ、この花もらっていくからな!
風見 幽香:
あらあら、照れちゃって。
難しいわねえ、あの年頃の子供は。
風見 幽香:
……立派な桜の木だって、若木の間は
繊細で手入れが大変なもの。
風見 幽香:
人間も、成長してる間は
繊細なのかもしれないわね。きっと。