--------------
アリスの家
--------------
アリス・マーガトロイド:
ふう、落ち葉掃きは、こんなとこかしら。
手伝ってくれてありがとう、厄神さん。
鍵山 雛:
いえ、私がやったのは少しだけ。その人形、
本当に生きてるみたいに動くのね。感心したわ。
鍵山 雛:
雛人形も、動かせたらな……。厄を溜めたあと、
自力で川まで行って、下ってくれればいいのに。
アリス・マーガトロイド:
雛人形、いちいち回収するのは
確かに面倒そうね。
鍵山 雛:
ううん、それが私の役目だもの。
面倒だと思ったことはないわ。
鍵山 雛:
ただ、人形たちが厄を溜めすぎると
大惨事が起きてしまう。なんとかできないかと思って。
アリス・マーガトロイド:
自分の意思で動くとなると、完全な自律人形ね。
それは、かなりハードルが高いと思うわ。
鍵山 雛:
そうなのね。もっと人間のためになる人形、
そんなに簡単にはいかないか……。
アリス・マーガトロイド:
まあ、いいじゃないの。
自律性がなくても、すべての人形は人間の友よ。
アリス・マーガトロイド:
時に子供の遊び相手として、時に観賞用として、
時に呪いや儀式の道具としてね。
鍵山 雛:
それはそうね。
雛人形だって、そもそも人間のためにあるもの。
アリス・マーガトロイド:
この子たちの仕事も、落ち葉掃きだけじゃないわ。
例えば、こんなことだってできるのよ?
アリス・マーガトロイド:
昔々ある所に、とても心優しい
厄神の女の子がいました。
鍵山 雛:
人形劇ね、貴方が里で披露しているのは知ってるわ。
……って、この劇、私の話?
アリス・マーガトロイド:
彼女は、人間の厄を吸い取って生きてきました。
時に悩み、試行錯誤しながら……。
アリス・マーガトロイド:
厄神の女の子は、そうやってこれからも
奮闘しながら、人間に寄り添っていくのでした。
鍵山 雛:
なんだか励まされちゃったわね。
少し……いえ、かなり恥ずかしかったけど。
アリス・マーガトロイド:
事実だもの。素直に誇ればいいんじゃない?
お気に召したなら、人形遣い冥利に尽きるわ。
鍵山 雛:
そう……。この子たちは、そうやって
人を楽しませて、寄り添って生きてきたのね。
鍵山 雛:
ありがとう。おかげでよくわかったわ。
人形って、とっても素敵な、人間の友だちね。
アリス・マーガトロイド:
理解してくれて何よりよ。
……古くから人々と共にいる、厄神さん。