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人間の里
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鍵山 雛:
ふう、リサイクル雛人形の補充、
ようやく終わったわ……って、あら。
多々良 小傘:
べろべろばぁ!
どうだ、驚いたかーっ!
子供:
きゃっきゃ! お姉ちゃん面白~い!
あなたもそう思うよね~、積み木さん。
子供:
あっ、キレイなお雛さまだ!
元気~?
鍵山 雛:
(えっ? ……ああ、私じゃなくて、
この雛人形に話しかけたのね)
鍵山 雛:
こほん、私は雛人形。今は元気だよ。
でも厄を溜めすぎる前に、川に連れていってね。
多々良 小傘:
あはは、ちゃっかり注意するなんて、やるわね。
子供の相手、なかなか板についてるじゃない。
鍵山 雛:
ふふ。子供って、すぐに友達になれるのね。
相手がなんであろうと、分けへだてなく。
多々良 小傘:
子供は純粋だからね~。積み木や人形みたいな
物のことも、友達扱いしちゃうし。
鍵山 雛:
もしかしたら、物にも心があるのかもね。
子どものほうが、本質を見てたりして。
多々良 小傘:
そうだよ~。何せ、正しく使われなかった無念で
付喪神になる道具もあることだしねっ。
鍵山 雛:
いえ……、付喪神に限った話じゃないかも?
すべての存在は、私たちは、みんな……。
多々良 小傘:
生きてるモノとして扱われているから、
こうして命を得ている……?
鍵山 雛:
ええ。私たちは元々、もの言わぬただの道具で、
誰かの想いの力でこうなっているのかもしれない。
鍵山 雛:
神だって信仰によって生まれることがあるんだし、
付喪神の貴方もいるわけだしね。
多々良 小傘:
え、ええ? そう言われると、確かに……!?
でも……ええ~!?
多々良 小傘:
……う~! そんなこと、気にしないもん!
ってなわけで、次は何して遊ぼっか?
子供:
わぁい! 私、鬼退治ごっこがいいな。
お姉ちゃんたち、鬼の役をやってくれない?
多々良 小傘:
……この子に鬼として扱われたら、
私、もしかして鬼になっちゃう?
鍵山 雛:
ものすごく気にしてるじゃない。
そんな簡単にはならないわよ。……たぶんね。