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妖怪の山
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河城 にとり:
突然、天狗様が現れたと思ったら……。
この新聞を読めって、どういうことです?
射命丸 文:
まあまあ、まずは読んでみてください。
今回の記事は、自信作なんです。
河城 にとり:
ふーん、そこまで言うなら読みますけど。
ん? この記事……。
射命丸 文:
フフフ、そうです。
今回、河童文字で記事を書いたんです。
射命丸 文:
河童の皆さんにも読んでもらいたいと、
いやぁー、結構、頑張っちゃいましたよ。
河城 にとり:
へー。でも、残念。文法も間違ってるし、
誤字も多いし、こりゃダメダメですな。
河城 にとり:
これなら機械が書いた方が、まだマシかも……。
射命丸 文:
な、何をバカなことを。
機械に文章なんて、書けるわけないじゃないですか。
河城 にとり:
いや、そうでもないですよ。
文章なんて、ただの言葉の組み合わせだから。
河城 にとり:
パターンさえ把握できてれば、
知能のない機械にでも、書けるってなワケで。
射命丸 文:
……ん? その理屈なら、文章どころか
会話でさえ、知能いらずで成立しちゃいませんか?
河城 にとり:
うん、成立するでしょうね。
たとえ、知能のない機械でも。
河城 にとり:
案外私たちも、ただ気持ちを
言葉に換えてるだけの機械なのかもしれませんよ。
射命丸 文:
うーん、なるほど。
それは興味深い仮説ではありますね……。
河城 にとり:
そういえば、この記事。河童文字を使って、
どんなことを書こうとしてたんです?
射命丸 文:
あぁ、記事の内容ですか?
それが、とんでもない大スクープなんですよ。
射命丸 文:
『悪徳マッドサイエンティスト!
河城にとりの詐欺事件』いやあ、名見出しです。
河城 にとり:
な、なに勝手なこと書いてるんだ!
他の河童には、絶対配っちゃダメですからね!!