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妖怪の山
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河城 にとり:
いやぁー。日照り続きで弱ってたけど、
みんな思いのほか楽しんでくれてるみたいだ。
因幡 てゐ:
河童を元気づけるために、流しそうめんとはね。
なかなか粋なこと、考えるじゃないの。
河城 にとり:
竹を提供してくれた貴方のおかげだよ。
せっかくだし、楽しんでいって。
因幡 てゐ:
もちろん、楽しませてもらうわ。存分にね……。
河城 にとり:
おっ、さっそく流れてきたみたい。
それじゃ、いっただっきまーす。
河城 にとり:
ん~、このツルっとした喉越しがたまらな……、
河城 にとり:
ゴフッ!! か、から~いっ!? なにこれ?
河城 にとり:
よ、よく見たら、器にワサビがべったり。
どうして……。はっ、まさか!?
河城 にとり:
おい、兎! お前の仕業だな!
こんなイタズラしたのは!
因幡 てゐ:
は? 何を言い出すのかと思ったら、
私がやったっていうわけ?
因幡 てゐ:
流しそうめんに協力した私が、
なんで、そんなマネしなきゃなんないのよ。
河城 にとり:
いや、でも、こんなことやりそうなやつ、
他にいないし……。
因幡 てゐ:
はぁ……。こっちは、楽しみたいだけなのに。
そこまで言うなら、この器を使えばいいわ。
因幡 てゐ:
これなら私も使ってたし、文句ないでしょ。
よそ者が嫌なら、そう言えばいいのに……。
河城 にとり:
い、いや、そんなつもりじゃ……はぁ。
とりあえず、そうめん食べよう。
河城 にとり:
ぶぇっ!? なにこれ、今度は甘い!
これ、まさか……黒い砂糖水!?
河城 にとり:
くそーっ! やっぱりアイツのせいか!
どこに行った、あの兎は……。
河童:
あの兎さんなら、さっき帰ったよ。
「十分楽しんだから、もう帰る」だって。
河城 にとり:
なにぃー! くそう、逃げられたか。やっぱり
イタズラ兎に協力なんて、頼まなきゃよかった!