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妖怪の山
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河城 にとり:
よしよし。光学迷彩スーツに異常なし。
さぁ~て、誰から驚かすかな。
河城 にとり:
いたっ! ちょっと、誰だよ。
前を向いて歩け……って、誰もいないじゃん。
古明地 こいし:
あ、ごめんごめん。
ぼ~っとしてたら、ついぶつかっちゃった。
河城 にとり:
ひゅい!? な、なんだ。あんただったのか。
河城 にとり:
まったく、ほんと気をつけてほしいね。
……にしても、この私をびっくりさせるとは。
河城 にとり:
(驚かすつもりが、逆に驚かされるなんて。
決めた……。最初に驚かすのはコイツにしよう)
古明地 こいし:
ん~? 急にうつむいちゃって、どうかしたー?
河城 にとり:
いやいや、なんでもない。
ちょっと、考え事をね……。
河城 にとり:
う、うわあー! なんだ、あれはー!
古明地 こいし:
えっ! なになに? 何か見えたの?
河城 にとり:
よし、今のうちに光学迷彩を使って……。
古明地 こいし:
あっ、ほんとだ! すごい! なんだあの影!
河城 にとり:
えっ、影!? まさか、ほんとに何かが……?
河城 にとり:
……って、何もないじゃないか。
あ~、びっくりした。
古明地 こいし:
あれー? ただの霧だったみたい。
見間違いだったね。ごめんごめん。
古明地 こいし:
あれ!? さっきまでいた雑貨屋さんがいない!
どこ? どこに行っちゃったのー?
河城 にとり:
遅い、遅すぎるわ!
私はずっと、ここにいたよ!
古明地 こいし:
わっ、すっごーい! さっきまで消えてたのに!
ねーねー、今のどうやったの?
河城 にとり:
くっそー! こうなったら、仕切り直しだ!
もう一度、光学迷彩を使って……。
古明地 こいし:
わっ、また消えちゃった!
すっごーい! 私とおんなじだね。
河城 にとり:
はっはっは、驚いたか。
これこそが河童の技術力……。
河城 にとり:
って、あれ? いなくなってるじゃん!
帰った? いや消えた、のか……?
古明地 こいし:
あれー? どこ見てるの?
私なら、ここにいるよ。
河城 にとり:
うわあああ! び、びっくりしたー!
これだから、天然は苦手なんだ……。