-------------- 妖怪の山 -------------- 犬走 椛: ここも異常なし! 今日も山は平和ね。 でも、なーんにも起きないと、ちょっと退屈……。 犬走 椛: ……ん? 高麗野 あうん: こんにちは~! お仕事ですか? 犬走 椛: 誰かと思えば、狛犬か。 なんにせよ、この先は通せないわ。 高麗野 あうん: はいはい、お構いなく~。 たぶんこの辺りに……。 高麗野 あうん: ……あった! 犬走 椛: なあに? それ。 すごく小さい……人形? 高麗野 あうん: これは念持仏といって、 持ち歩くのに便利な仏像よ。 高麗野 あうん: なんだか、呼ばれている気がしたの。 この仏様だったのね。 犬走 椛: 仏像……ということは、索道から 人間が落としたのかもしれないわね。 犬走 椛: 私にはよくわからないけど、気になるなら 人里の寺にでも届けてあげたら? 高麗野 あうん: そうね! 落とした方が、 お寺を頼って来られるかもしれないし。 犬走 椛: 索道の警護をしていると そういう落とし物がたまにあるのよ。 犬走 椛: 後から探しに行かされることも多いから、 貴方が届けてくれれば手間も省けて助かるわ。 高麗野 あうん: 警護のお仕事、ということは…… 『守護する』ってことよね。 高麗野 あうん: 守るってとても大変だけど、 すっごくやりがいがあるわよね。わかるわ~! 犬走 椛: わかるって……どういうこと? 高麗野 あうん: 私は狛犬なので、神社仏閣を悪しき者から 守護することがお役目! 高麗野 あうん: 春夏秋冬はるなつあきふゆ、晴れでも雨でも風でも雪でも、 年中無休でお勤めするのが私の誇りなのよ。 犬走 椛: 誇り……。 高麗野 あうん: さてと。 それじゃ、さっそく念持仏を届けに行こうかな。 高麗野 あうん: お仕事がんばってね、山の守護天狗さん。 同じ守護仲間として応援してるわ~! 犬走 椛: ……あんな風に仕事に胸を張れるって、 ちょっとうらやましいかも。 犬走 椛: お役目は上からの命令。 従うしかないって思ってたけど……。 犬走 椛: 私も、たまには 前向きに考え直してみようかな。