-------------- 妖怪の山 -------------- 犬走 椛: ケガで休んでる子がいても、欠員補充はないし! 早めに出してた休暇申請は、忘れられてるし!! 犬走 椛: おまけに今日は他の人のミスで怒られるし! も~~~~! やってられるかーーーっ!! 犬走 椛: ほんっと、イヤんなっちゃう。 私の仕事運、変な厄でもついてるんじゃない? 鍵山 雛: こんにちは。 犬走 椛: うわっ!? 誰もいないと思ったのに……。 も、もしかして、全部聞いて……? 鍵山 雛: お仕事、大変そうね。 犬走 椛: い、今のはその……最近ついてないなー。 仕事運悪いなー、みたいな……。 犬走 椛: 決して、お役目に文句があるとか、 そういうアレでは……。 鍵山 雛: これ、どうぞ。 お試しに、ひとつあげるわ。 犬走 椛: なにこれ。……型紙? 鍵山 雛: インスタント雛人形よ。厄払いに使うの。 切り取って、折って組み立てて……。 鍵山 雛: 仕事運に効くかは、わからないけど。厄として 流してくれれば、私が集めて改善できるかも。 犬走 椛: 厄払いねぇ……。 まあせっかくだし、気休めに試してみるか。 -------------- 数日後 -------------- 犬走 椛: こんにちは! この間のお礼をしに来たわ。 鍵山 雛: あら、いらっしゃい。 お礼というと……雛人形のことかしら? 犬走 椛: 正直、たいして期待してなかったの。 でも、言われた通りに試してみたら……。 犬走 椛: 人手の足りなかった所に新人が来たり、 横暴だった上司が異動したりでね。 鍵山 雛: そう……。ただの偶然かもしれないけど、 もしお役に立てたのなら、よかったわ。 犬走 椛: 仲間も皆、環境が良くなったって喜んでるわ! それに、何より……。 犬走 椛: 通りすがりの貴方が、わざわざ 私を気にかけてくれたのが嬉しかったの。 犬走 椛: だから……よかったらこれ。 受け取って! 鍵山 雛: 美味しそうなお酒ね。ありがたく ちょうだいするわ。……でも、いいの? 鍵山 雛: わざわざ厄神に会いに来たりして。 また仕事運が悪くなるかもしれないわよ。 犬走 椛: 大丈夫よ! あとでちゃーんと、えんがちょしておくから。 鍵山 雛: ふふっ。それじゃあせっかくだし、 このお酒、貴方も一緒にいかが?