-------------- 人間の里 はずれの道 -------------- 比那名居 天子: ここか。土砂崩れで、道が塞がったのは。 たしかに、これでは里の外に出られないな。 依神 紫苑: 飛べない人たちは、苦労しそうですね。 復旧も大変そう……。 比那名居 天子: よし、決めた。この土砂崩れ、 私の力で、きれいさっぱり消してやろう! 依神 紫苑: さすがは天人様。なんと慈悲深い……! 私も、お手伝いさせていただきます。 比那名居 天子: 土砂は、すっかり片づいたな。 この程度、私にかかれば朝飯前だけど。 依神 紫苑: 天人様、すごいですっ! 鮮やかな手際に、ほれぼれしちゃいます。 依神 紫苑: そうだわ。ここに天人様の像を建てましょう! いかがですか、里のみなさん? 比那名居 天子: この程度のことで、大げさな気もするが……、 地上の民が望むなら、やぶさかではないな。 比那名居 天子: 私の力をもってすれば、像の建造も容易なこと。 さあ。天人の力、とくと目に焼きつけよ! 依神 紫苑: すごい! 小一時間で、天人様の全身像が! しかも、こんなに大きく造るなんて……。 比那名居 天子: 高さは、50メートルくらいかな? 釈迦如来に負けないサイズは、ほしいからね。 依神 紫苑: でしたら、帽子も立派なものを作りましょう! あの大岩なんて、よさそうじゃないですか? 比那名居 天子: それは、いい提案だね。 よし。まずは大岩を帽子の形にして……。 比那名居 天子: これで仕上げだ。巨岩よ! 宙へ舞い上がり、巨像の頭に鎮座せよ! 依神 紫苑: て、天人様の像が、崩れちゃった!? 申し訳ありません。私が余計な提案を……。 比那名居 天子: あっはっは! さすがは私の像。 崩れ方も豪快で気持ちいいじゃないか。 比那名居 天子: それに崩れたあとが、いい感じの丘になった。 これはこれで、趣おもむきがあるんじゃないか? 依神 紫苑: たしかに! では、天人様のお名前にあやかり、 この場所を『天子が丘』と名付けましょう。 比那名居 天子: はっはっは! 土地に自分の名前か。 少々むずがゆいが、好きに呼ぶといい。 依神 紫苑: じゃあじゃあ、丘の上に花も植えましょう。 あと、石段でのぼれるようにして……。 比那名居 天子: では、お前を天子が丘の管理人に任命する。 この場所を自由にアレンジしてみせよ。 依神 紫苑: お任せください! この天子が丘を きっと、素敵な場所にしてみせます!