--------------
霧の湖
--------------
古明地 さとり:
うぅ……。油断して、地上に居すぎたわ。
心の残滓を視すぎて、気持ち悪い……。
古明地 さとり:
地底に帰りたいけど、辿り着けるかしら?
ああ、今にも気が遠くなりそう……。
チルノ:
ん? 誰だ、そこにいるのは?
……って、お前は!?
チルノ:
知ってるぞ! お前、人の心を読む妖怪だろ!
地底の嫌われ者が、あたいの縄張りになんの用だ?
古明地 さとり:
貴方は、ここの主ですか? 私は、ただ……
チルノ:
おらー! 早く出てけー! 断るなら、
けちょんけちょんにして追い返してやるからね!
古明地 さとり:
ま、待って。争うつもりはありません。
私は、ただ家に帰りたいだけで……うっ。
チルノ:
……なに? あんた、具合悪いの?
チルノ:
え~。ここで倒れられてもなぁ。
う~ん、む~ん……。仕方ないな~。
古明地 さとり:
……何をしているんですか?
額が冷たい……。これは、氷?
チルノ:
あたいが作ったんだよ。
病人は、頭を氷で冷やすもんでしょ?
チルノ:
よいしょっと。それじゃ、地底まで
送ってやるか~。あそこ暑いから嫌だけど~。
古明地 さとり:
……私のこと、嫌いなのでは?
道中、貴方の心を覗き見るかもしれませんよ?
チルノ:
うーん、それは嫌だ。でも、最強妖精のあたいが、
病人をいじめたとかケチがつくのも嫌だし……。
チルノ:
ま、あたいは、やりたいことをやるだけ!
真の最強は、細かいことを気にしないものなのだー!
古明地 さとり:
ふ……。変なひとね、貴方。
--------------
地霊殿
--------------
古明地 さとり:
ふぅ……。部屋で休んだおかげで、
だいぶ落ち着いてきたかしら。にしても……、
古明地 さとり:
本当に変わった妖精だったわ。嫌いなはずの
私を助けて、言葉に……心に、裏表がなくて。
古明地 こいし:
あっ。お姉ちゃん、帰ってきてるー。
今日は、珍しく出かけてたんだね。
古明地 こいし:
あれ? その握ってるのって……、
氷のカケラ? 冷たくないの?
古明地 さとり:
……いいえ、とてもあたたかいわ。
このまま、ずっと溶けないでいてほしいぐらいに。
古明地 こいし:
えー? 氷は冷たいでしょ?
変なお姉ちゃーん。
古明地 さとり:
ふふ、そうね。ただ……、たまには、
地上に出るのも悪くない。そう思えたって話よ。