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地霊殿
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古明地 さとり:
妙な気配がすると思ったら……、誰?
こんな遅い時間に、私の屋敷に忍び込むのは。
鬼人 正邪:
おっと。これは、面倒な奴に見つかってしまったな。
古明地 さとり:
貴方は……、天邪鬼? これは、
問答無用で縛り上げるのが大正解の案件かしら。
鬼人 正邪:
はは、そう急ぐなよ。何をしたところで無意味だ。
今この瞬間は、お前の悪夢にすぎないんだからな。
古明地 さとり:
それは……、私をだまそうとしてるの?
残念だけど、私は少しも寝ぼけてませんよ。
古明地 さとり:
夢だなんだと誤魔化して、逃げようとしても無駄。
さあ、痛い目を見たくなければ、おとなしく……
鬼人 正邪:
いいや。お前は、まだ夢の中さ。
鬼人 正邪:
幻想郷は滅亡し、我らの世界は無に帰した。
これが悪夢でなくてなんだ? お前は空を見たか?
鬼人 正邪:
月が! 二つあるんだぞ!?
実に夢らしい荒唐無稽。滑稽すぎてつまらないな!
鬼人 正邪:
それに、早く目を覚まさないと、
手遅れになることもある。例えば、お前の妹……、
古明地 さとり:
……こいしが、なんですって?
鬼人 正邪:
そう、こいし……、お前を厭わぬ絶対の絆。
あれは本当に、現実に存在するのか?
古明地 さとり:
……そう。貴方、やはり悪だくみをしているわね。
幻想郷支配の手立てを、地底に探しにきたんだわ。
古明地 さとり:
くだらない言葉で私を操ろうとしたようだけど……、
残念ね。この私に、嘘偽りは通用しないのよ。
鬼人 正邪:
……チッ。これだから、サトリ妖怪は気に入らない。
何を企んだところで、すーぐバレるんだもんなー。
鬼人 正邪:
はー、面白い面白い! 見事やられた天邪鬼は、
敗北を味わいながら、すごすご退散しますよーっと。
古明地 さとり:
まったく……。次は容赦しませんからね。
鬼人 正邪:
ああ、ちなみにだが……。
鬼人 正邪:
さっきの話は、嘘偽りなんかじゃないぞ。
私たちは、もうずっと醒めない悪夢の中にいる。
鬼人 正邪:
信じようと信じまいと、それが一つの真実だ。
否定したいなら、証明してみせるんだな。
古明地 さとり:
……で、心を読まれる前に逃げて、
証明させないわけね。でも……、
古明地 さとり:
なんだか、無性にこいしに会いたい。
そうしないと……、本当に悪い夢を見そうだわ。