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地霊殿
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古明地 さとり:
それで、私になんの用ですか?
地底に縁もゆかりもない、道教の仙人さん?
豊聡耳 神子:
いやあ。心の隅まで見透かす妖怪が地底にいると
風の便りで聞いてね。ほら、私は耳がいいから。
古明地 さとり:
興味本位、ということですか。それでは、
お望み通り、考えを当ててさしあげましょうか?
豊聡耳 神子:
いいや、それには及ばないよ。
私は、ただ君に会いたかっただけなのさ。
古明地 さとり:
ちょっと……、近いのですが?
豊聡耳 神子:
……なるほど。たしかに、君は私と同じだね。
いや、君の方がずっと過酷か。
豊聡耳 神子:
私は、この耳当てをすることで、ある程度
聞きたくない声を防ぐことができる。だが……、
豊聡耳 神子:
目となると、そうはいかない。君のその瞳は、
見たくないものを否が応でも映してきたのだろう。
古明地 さとり:
……ええ、そうですわ。
豊聡耳 神子:
これまで、さぞつらかったろうね。せめて、
その苦しみを癒やしてやれるといいのだが。
豊聡耳 神子:
奇遇にも、我々は突出した力を持つ者同士だ。
どうだい? 今から、私の廟で話など……
古明地 さとり:
……それで? そうやって私に取り入って、
道教を信仰させよう。そういう魂胆ですか。
古明地 さとり:
たしかに、宗教団体とサトリの力は、相性が
いいと思いますよ? ……お断りですけどね。
豊聡耳 神子:
ふっ……、あはは!
これが君の力か。なるほど、見事に読まれたよ。
豊聡耳 神子:
手の内がバレた以上、今日はおとなしく帰るが……
君とは、ぜひこれから仲良くしたいね。
豊聡耳 神子:
見えすぎる目を持つ君と、聞こえすぎる耳を持つ私。
互いにしか語れない話もあるだろうから……ではね。
古明地 さとり:
なんだかクセの強い人ねぇ。また来たら、お燐に
黒板を引っ掻かせて、追い返してしまいましょう。
古明地 さとり:
悪いんだけど、傷の舐め合いなんて
好きじゃないのよね。さよなら、地上の仙人さん。