--------------
聖輦船
--------------
古明地 さとり:
こんにちは。こちら、
命蓮寺の活動拠点で間違いないかしら?
聖 白蓮:
ええ、そうですが……、あら?
貴方は、たしか……。
古明地 さとり:
古明地さとりです。こちらで、妹のこいしが
お世話になっているので、今日はご挨拶にと。
古明地 さとり:
手土産に、鈴瑚屋の団子を持ってきました。
よろしければ、信者のみなさんでどうぞ。
聖 白蓮:
まあ! なんて礼儀正しい方。
どうぞ座って。お茶でもお出ししましょう。
古明地 さとり:
いえ、お気遣いなく。……ところで、
こちらでは、こいしは普段どんな様子ですか?
古明地 さとり:
家に居つかない子なので、時々心配になるんです。
元気でやっているか、人の恨みを買っていないか……。
聖 白蓮:
命蓮寺にいる時は、いつも楽しそうですよ。
他の信者たちとも、すぐ打ち解けたようですし。
聖 白蓮:
ただ……、
古明地 さとり:
ただ?
聖 白蓮:
時折、不真面目な態度が目立ちます。まだ、
仏教の神髄を理解していないためでしょうが。
聖 白蓮:
修行中、わざと信者の気を散らしたり、
村紗に水をかけたり……。少し困ってますね。
古明地 さとり:
まあ。それは……、
古明地 さとり:
みなさんの対応に、問題があるからでは?
聖 白蓮:
え? まあ、これまで、
あまり強く注意はしてきませんでしたが……。
古明地 さとり:
いえ。こいしは、少し特別な子ですから……。
あの子に合わせて、周囲も工夫をするべきかと。
聖 白蓮:
く、くふう……? と言いますと?
古明地 さとり:
例えば、こいしの集中力を効率的に保つために、
修行の合間にお遊戯の時間を設けるとか。
古明地 さとり:
あとは、食事も気になりますね。寺では素食が
基本でしょうが、あの子はまだ子供ですし……
古明地 さとり:
経験という意味でも、ご褒美という意味でも、
美食は要ると思うのです。このお団子のような。
聖 白蓮:
ええと……。でも、こいしさん一人のために、
信者全員の生活を変えるというのは、ちょっと……。
古明地 さとり:
なぜですか? 貴方は、命蓮寺の長である前に、
こいしの保護者でもあるんですよ?
古明地 さとり:
その責任は、とても重いはず。
貴方は、謹んでこれを果たすべきだと思いますが。
聖 白蓮:
そ、そうです……かね?
では、信者たちと検討させてもらいます。いずれ。
古明地 さとり:
前向きに、お願いしますね。貴方が
乗り気でないことは、心を読んでわかっています。
古明地 さとり:
しかしながら、この変革は必要なこと……。
では、私はこれで。また様子を見にきますね。
聖 白蓮:
な、なんて圧の強い方……。まさか、
あの人が、いつか外の子に聞いた、アレ……?
聖 白蓮:
妖怪保護者……だったのかしら。
愛情深いのは美点だけど、時に困りものね。