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霧の湖
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ナズーリン:
ねー。本当に、ここにあるの?
なんにも反応しないけど……。
村紗 水蜜:
絶対あります!
この湖で失くしたことは、確実なんですから!
ナズーリン:
……すごい自信だね。
でも、失くしたのは人間なんでしょ?
村紗 水蜜:
そっ……そうです! そのかたは、
確かにここで指輪を失くしたと言っていました。
ナズーリン:
そいつが探しに来たらいいんじゃないの?
その指輪が大事なら、なおさらさぁ。
村紗 水蜜:
に、人間にとって、この湖は何かと
危険ですし……あ、ロッドが反応してますよ。
ナズーリン:
え? あ、ほんとだ。
この反応は……宝石?
村紗 水蜜:
いやー、無事に発見できました。
ありがとうございます、ナズーリン!
ナズーリン:
そりゃよかった。ところで、その指輪って
どんな物なの? ちょっと見せてよ。
村紗 水蜜:
えっ! いや、その……、
……うう。すみません、これです。
ナズーリン:
んん? これ、指輪じゃなくて数珠じゃん。
どういうこと?
村紗 水蜜:
実は、失くし物をしたのは、私なんです。
聖からもらった翡翠の数珠を湖で落として……。
村紗 水蜜:
大事な物なのに、失くしてしまったとは
情けなくて言えず……その、ごめんなさい。
ナズーリン:
なーんだ、そんなこと。気にしなくていいよ。
失くし物なら、一輪からも頼まれて……あれ?
ナズーリン:
……そういえば一輪も、
人間の失くし物って言ってたな。もしかして。
村紗 水蜜:
おそらく、本人の物だと思います。
以前、そんな話をしていましたから。
ナズーリン:
はぁ。この前も、聖とご主人様に頼まれたし、
ぬえや狸や化け傘も、よく頼んでくるし……。
ナズーリン:
まったく、君たちねえ。
私を便利に使いすぎじゃないかい?
村紗 水蜜:
みんな、それくらい貴方を信頼しているんです。
失くしても、必ず見つけてくれますからね。
村紗 水蜜:
これからも頼りにしていますよ、ナズーリン。
ナズーリン:
ほんと、手のかかるやつらだなぁ。
しょうがないから、見つけてあげるけどさ。